練習走行(8月12日)
作成日:98/08/12
更新日:98/08/17

7h公式練習迄、泣いても笑っても後1週間。今日が最後の練習日となる。

今日の走行枠はレーサークラス4本、プロダクションクラス4本。仮に8本全部走っても期待するデータは取れないだろう。

アキラがレーサークラスで2本、俺とRSオータがプロダクションクラスで各々2本づつ走る予定だが、この6本を走りきっても、
タイヤとブレーキの耐性データは目安程度にしかならない。

どちらかと言うと、ハードスリックとファイナルに慣れる事が優先される一日となりそうだ。
とりわけRSオータはこの所のトラブル続きで、まともに走っていない。今の状態で公式練習に臨むのは酷というものだろう。

気になる天候は曇り。雨の降る様子は無いのが、幸いする。



昨日、色塗りの準備で、タンクの塗装を剥離剤で全て剥がしてしまった。彼らはまだその事を知らない。

「今日は君らには銀タンで走ってもらう。」

「銀タン?何それ?」

トランポのドアを開け、それを見せる。

銀タンク

「げ!銀タン・・・ク。」

「これさぁ・・・ツナギに色着くよ。」

「え?あ・・・あぁ。そーいやそーだな。」

「オータの新品ツナギが・・・。」(笑)

RSオータのNEWつなぎ(真ん中)

「ははは。まぁクリアでも吹いとくわ。」(汗)



車からバイクを降ろし、前後ハードスリックに履き替える。

ホイル交換作業

前回の練習では、結局履いて走る事が出来なかった。今度こそ、こいつを履いて走れる。
初めてのハードコンパウンド。若干の不安を抱えながらも、実は楽しみでしょうがない。

彼らがホイルを交換している間、タンクのクリア処理について思案する。

(クリア吹くっつってもなぁ。)言ってはみたものの、又後から剥離処理すんのがめんどくさいし、走行迄に乾かなかったらそれこそ悲惨だ。

(どーすっかな・・・・。)

。そっか。)

「ガムテ貼るわ。」タンク全体をガムテープで覆い、ニーグリップする個所にはラバーを貼る事にする。

黒いガムテープを次々に貼っていると、RSオータが赤いガムテープを持ってやってくる。

「この辺は赤だな。」などと言いながら、まだ貼っていない部分に赤いガムテープを貼り始めるRSオータ。

RSオータ:「ん。出来た。」

俺:「ははは。アプリリアじゃん。」

アキラ:「おぅ!かっこえーな。これでもいいんじゃねーの。」

RSオータ:「うん。おっけー。これで決勝走るか。」

俺:「だーめっ!」(笑)

APタンク(単に赤黒だから)

1本目の走行開始時間迄の間、タイヤ交換のタイムを計測する2人。

RSオータのリア交換アキラのリア交換

又、前回の走行でディスクが真っ赤になった時に装着していたブレーキパッドを新品に交換する。

交換前のパッド(もうなんちゅーか、くさってる)



9時30分。いよいよ1本目の走行時間。前後新品のハードスリックを履いたFZRに乗って、俺出動。

フロントリア

俺出動

タイヤとファイナルの確認に集中した1本を心がける。前回の予定課題をなるべく今日中に消化したい。
新品のスリックを履くのも久しぶりだ。ピットアウト後、1周は慎重に走る。

ホームストレートを通過し、計測開始から徐々に全開モード。1周目2分23秒。

今まで2速だったS字の進入は3速で入る。やはり立ち上がりでもたつく。もっと進入スピードを上げて、すばやく切り替えさなければならない。

2速の予定だったヘアピンだけは1速に落とさなければならないようだ。

各ストレートはバッチリ決まっている。ダウンヒルストレートエンドはスピードが出過ぎて恐いくらい。

2周目、早くも20秒。ブレーキングポイントを少しずつ奥にとる。攻めあぐねていた1,2コーナーも決まってきた。

3,4周目と19秒。体がだんだん慣れてきた。走りに体が付いてくる。エンジンは絶好調。

5周目に18秒。そして6周目、自己ベストの17秒がでる。

7周目も17秒。新品のハードスリックはこの上なくグリップする。旋回性も抜群で、切り替えしも軽い。

8周目、ついに17秒をきって16秒後半のタイム。

(でたか・・・16秒。)サインボードで自己ベストを確認する。

この後4周の間、16秒後半から17秒前半で周回する。
ギア比のショート化により1速から2速に変更したコーナーがイマイチ決まらない。
アクセルを開けるポイントをもっと手前にしなければ、立ち上がりのこのモタツキは解消されない。

13周目、だんだんとコツも掴めてきた。完全ではないが、1本目にしてはまずまずだろう。タイムは16秒17。

そして最終ラップ。130Rはアウト一杯で5速へシフトアップ。S字は進入スピードで全てが決まる。根性で50m看板手前のブレーキング。
一つ目のクリップを過ぎたと同時にアクセルを開けながら、出来るだけクイックに切り替えし、バイクの方向を変える。切り替えしの反動でフロントから挙動がくる。
一瞬、落ち着くのを待って再びアクセルを開け始め、出口が見え始めた頃、ややバイクを立てつつ全開。ここへ来てやっとS字が決まり始めた。

S字を3速で立ち上がると、50m看板でブレーキング。2速へ落とし、Vコーナーへ進入。早めにアクセルを開ける。

短いストレートで3,4とシフトアップ。ヘアピンのブレーキングは100m看板を超えた所。進入の直前で1速へ落とす。

クリップを奥にとり、立ち上がりラインにバイクを乗せる。アウト側ゼブラに付いた所で2速へシフトアップ。

ダウンヒルストレート。タコメータを確認しながら、6速まで入れる。スピードが乗ってきている。いい感じだ。

6速全開。吹けきった所で、150m看板。ブレーキング開始。フロントの制動能力を最大限に引き出し、上下に暴れるフロントを両手で押え込む。

フロントの挙動に収拾が付いた頃、5,4・・・3と落とし、進入直前に2速へ落とす。

クリップ手前より開け始め、アウト側ゼブラに付く直前で全開。

セカンドアンダーで3速に入れ、バイクを右に寄せると、全開のまま最終コーナーのアプローチへ向かう。

2速へ落とし、最終コーナー。アクセルで体とバイクの同調をとり、左から右へと切り返す。一気にフルバンクし、一瞬ジワッと開け、ホームストレートに向けて全開。

そしてチェッカー。タイムはさらに1秒縮めて16秒05。自己ベストを2秒も短縮した1本となった。

チェッカーを受けたと同時くらいに雨が振り出してくる。15分後の走行にアキラが控えていた。



アキラ:「まいったなぁ。」

俺:「ん。振り出してきちゃったね。」

10分程、パラパラと降っていた雨は走行5分前に止む。そして走行開始時間には、ほぼドライ。

ベストタイムを2秒も更新した俺を見て触発されたのか、気合いを入れたアキラが出動。

1周目、20秒。2周目18秒と、順調にペースを上げていく。

しかし3周目、突然のピットロードへ入ってくる。

まったく予測していなかった為、あわててバイクに駆け寄る。

俺:「どした。」

アキラ:「なんかエンジン変な音する。」

俺:「えっ!」アクセルを吹かしてみる。

いつもなら、「フォン!フォン!」って感じの音なのに、「ブロロン。ブロロン。」と「カタカタカタ」が一緒に聞こえる。

俺:「バルブ!?」何となく、バルブが落ちるとこんな感じの音って言う具合。

俺:「とりあえず、入ろう。」バイクをピットに入れる。

暫くすると、3,4コーナーで見学していたRSオータが小走りに帰ってくる。

アキラ:「エンジンから変な音する。」

RSオータ:「まじ!?」エンジンをかける。さっきと同じ音。

ヘッドだのクランクだのと色々話が出るが、所詮は想像でしかない。

ふと、ある事にアキラが気づく。

アキラ:「これ、オイル入ってないよ。」エンジンオイルの残量確認窓を見ると、確かにオイルが落ちて来ない。

以前に規定量のオイルを入れたはずなのだが、ヘッドのオーバーホール後だった為、足りなかったのかもしれない。
それとも圧縮が足りなくて飛んだのか?

とりあえず、オイルを足してエンジンをかけてみる事にする。


そして、祈るような気持ちで再度エンジンを始動する。

ガックリとうなだれるRSオータ

が、しかしダメ。相変わらず、カタカタと音がする。

この瞬間、少なくとも今日はもう走れない事を、全員が暗黙的に理解している。

暫くすると、叫ぶようなRSオータの声がピットに響く。

RSオータ:「よし!開けるかぁ!」

エンジンを開け、ヘッドの確認作業を決断するRSオータ。午前11時10分。2本目のプロダクション走行が開始された時だった。
快調な爆音を響かせながら、7耐のオレンジゼッケンを付けたバイクが次々とピットアウトしていった。



まず、キャブレターとラジエターを外す。

プラグを外し、ヘッドカバーを外す。

吸気側排気側

ジェネレーターカバーを外す。

クランクを回しながら、ヘッドの動作確認を行う。

(う〜ん。暇だ。)エンジンを2人に任せている俺はPCをピットに持ち込む。

やる事が無い為、ドキュメント書きをする俺。

上から見た感じでは、ヘッドに異常が見られない為、今度はヘッドを取り外しにかかる。

カムからチェーンを外す。

取り外されたカム

ヘッドを取り外し、シリンダーを外す。

取り外されたヘッドシリンダーの取り外し作業

どーでもいいが、7h宣伝用のビデオに写っている俺。

ここまでの作業では特に異常が見当たらない。
バルブ1本1本を確認した訳ではないが、ヘッド自体に原因は無さそう。

このまま組んで、再度エンジンをかければ復活するのでは?そんな雰囲気が流れる。

今日最後のプロダクション走行迄、約2時間。公式練習迄、どうしても走っておきたい。

そうと決まれば今度は速効で組み込む。昼飯抜きで作業が続行する。

黙々と作業を続ける2人

午後1本目の走行が開始された。先程雨を降らせた雲は消え、空は青く太陽が路面を照り付けている。
こんな時に限って、ここ最近では珍しい絶好のコンディション。

ピットインとピットアウトを繰り返す他チーム

そしてやっとキャブレターの取り付け迄に漕ぎ着ける。走行迄あと40分。

キャブの取り付け。組み込み作業の最終段階。

しかし、組んだからと言ってエンジンが正常に回るとは限らない。祈るような気持ちでセルスターターを押し、エンジンをかける。


先程のような異音はしなくなったが、なんとなくアヤシイ感じ。絶好調とは言えないまでも、一応上迄吹けるようになった。

「よし!OK!走れる。」

残り20分。ギリギリで間に合った。速効で昼飯を食い、準備するRSオータ。



15時40分。本日最後の走行。RSオータ出動。

大丈夫だろうか?なんとか復活して欲しい。

アキラと2人でコンクリートウォールに立つ。2分が経過し、そろそろ最終コーナーに見えてくる頃。ストレートスピードを確認したい。

しかし、我々の目に見えたのは、最終コーナーではなく、ピットインしてきたRSオータだった。

(だめだったか・・・。)

ピット前にバイクを止め、異音のしている場所を耳で探る。


エンジンは完全に壊れている。原因はヘッドか?それともクランクか?

本番を来週に控え、動揺を隠せない3人。

そして、俺達の耐久は・・・。


本日のベストタイム
HIRO2分16秒05

〜 今回の教訓 〜

・・・・。

以上

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