’92自分TZ
作成日:98/03/11
更新日:98/03/11
93年の1シーズンをTZで参戦してきた俺はすっかりレーサークラスに味を占めてしまい、
今度は自分のTZでレースに出たいと考えるのは、ごく自然の成り行きだった。
とは言っても当然新車の94TZが買える訳はないので、やはり中古の92TZを探す事となる。
しかし、シーズン終了あたりから雑誌等で92年型のTZを探すが、これがなかなか無い。
しまいには片っ端から電話をかけてみるが、「もう売れちゃいました」の連発。
関東近辺の有力チームにも当たってみたが、まるで駄目。
そんなことをしているうちに月日は過ぎてゆき、94年シーズンも開幕する次期にさしかかった、あるRS発売日。
いつものように半ばあきらめ気分で{売りたしコーナー}に載っていたその人に電話をかけると、
「あぁ。まだありますよ」とのこと。
4月になっても走らせるバイクがない事実にこの上ない焦りを感じていた俺は、それでも冷静さを保ちつつ、
「はぁ。そうですか。」と。
「でもねぇ、一人買いたいって言う人がいるんだよねぇ。」
この一言でやはり冷静さを保てなくなった俺は
「もう決まってるんですか?
「決まっちゃいないんだけど、考えさせてくれとか言われちゃってんだよねぇ。」
「でも、まぁ早い方に売るつもりだから、とりあえず見に来てもらってもいいけど。」
その週末、速攻見に行った事は言うまでもない。せっかく見つけたTZを逃してなるものか。
売値分の現金を持ち、空っぽのトランポで約2時間程走る。
現地に到着し、簡単な挨拶とレース話の後に、「トランポにバイク乗せてますんで、ちょっと車のキー持ってきますね。」と彼。
「いよいよ俺のTZとご対面だ。」もう自分のものになったかの如くドキドキしてる間に戻ってきた彼は、
「いやぁ。僕にはとても扱いきれませんでした」などと言いながらリアハッチを開ける。
と、そこには夢にまで見た92年型のTZ250が置いてあった。
ぼろい。
一瞬ひるんだ俺に気づいてか、「まぁちょっと汚いけど、エンジンは調子いいっすよ」と弁解する彼。
「(扱いきれない奴にエンジンの調子など分かるもんだろうか?)」
「ミッションは何入れてるんですか?」と問いかける。
「う〜ん。よくわかんないんですよね。筑波仕様だとは思うんですけど。」
「・ ・ ・」
「スペアパーツとかは?」
「もう全部使っちゃって、ボルトくらいしか残ってないんですよ。」
「(ボルトって・・・)」
「クランクはどれくらい使ってます?」
「え〜っと。・ ・ ・僕も前の人から買ったもんだから。はっはっは。」
ふ、不安だ。
「整備もちゃんとしてるし、このままガソリンと水入れれば走りますよ」と言う彼。
正直、かなり悩んだ。
しかし、ここで買わねば今シーズンは走れないかもしれない。迷う。
「んじゃぁ、買います!」
札束を一枚ずつ確認する彼と自分のトランポへバイクを乗せ換える俺。
それでもTZを後ろに乗せての帰り道はやっぱりうれしかった。信号待ちの度に何度も振り返り、バイクを眺めてはにやける。
俺のTZだ。
94年シーズンがスタートした。
以上
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