’97ハイランドロードレース選手権第4戦
作成日:98/03/15
更新日:98/10/14
先月行われた第3戦から早1ヶ月、毎年恒例となった夏合宿ではタイムこそ更新する事は出来なかったものの、
安定して0秒台を連発する事が出来た。レースでは2分を割っていかないと、この練習の意味が無い。
快晴に恵まれた今回も絶好のコンディション。
しかし、参加台数は前回からさらに1台減のエントリー8台。SP400はついに6台を割り込み、レース不成立となる為、
ライダースミーティングの結果、SP250,N250との3クラス混走レースとして行われる事となった。
まずは予選。出走しなかったライダーが1名いた為、7台での予選となる。
例によって予選から全開で飛ばす。5週目のホームストレートで電光掲示板を確認すると、予選3位。タイム1分59秒台。
「よし、2分切った。」上り調子でさらにタイムアタック。そのままの勢いで1ラップし、さらにペースアップを図るべくラストラップへ突入する。
「もっと、もっと開けなきゃ。」スクエアコーナー立ち上がり。リアから来る挙動でバイクがゆらゆら揺れるが、
両足でタンクをがっしり挟み、車体を安定させると同時に全開。
軽く右へダイブしながら、全開で5速迄シフトアップ。そして迎えるスプーンコーナー。
ギュッとブレーキをかけつつ、4,3とシフトダウンしたところで一気に方向を変える。1つ目のクリップを過ぎたあたりで
徐々にアクセルを開けていき、2つ目のクリップへ向かって3速全開。このポイントが一番タイムの稼ぎどころである。
根性一番!いつもより早めにぐわっとアクセルを開けた瞬間、駆動力に耐えかねたリアタイヤが空転する。
「うわっ!」途端に一瞬戻し、事なきを得るが、これで一気に集中力を失う。
「はぁ〜怖かった。ここまでだな。かぁ〜えろっと。」と、ピットイン。ホームストレートでは予選終了のチェッカーが振られていた。
予選終了後の電光掲示板には土壇場で2位に浮上した俺のゼッケン6が表示されていた。タイム:01’58”844
「やったぜ!58秒台!」
GP250を始めた当初、どんなにがんばっても2分3秒を越えることが出来ず、遠い存在だった58秒台に、
やっと手が届いた瞬間だった。みんな喜んでくれた。
当然アキラは今回もポールポジション。前回に引き続き、予選ワン・ツー。申し分のない予選結果となった。
そして決勝!気合い充分。
スタートもうまくいき、順調にアキラのテールを睨み付ける。
レースも2周目に入った頃、アキラの右足がぴょこりと俺に合図を出す。
「抜け。」のサインであった。
ほいほいとばかりにトップを譲ってもらう。
アナウンスは「おぉ〜っと@@選手、トップを奪われました〜。」
「そぉ〜してぇ、トップを奪ったのはぁ。・・・・・ゼッケン6番、内澤選手ぅ。」
「このままぶっちぎってやる。」とも思ったが、そんなわきゃぁなく、
ぴったりくっついてくる。なにしろベストタイムで5秒近くも差のあるやつだ。
元々国際ライダーなのだから当然と言えば当然なのだが。
アナウンスは「しかぁ〜し、ぴぃ〜ったりとくっついているぅ。その差は開かないぃぃ。」
そんな事をして遊んでいる内に3位のライダーが迫ってきた。
このままブロックしていてもフェアじゃないと思ったアキラが新コーナー入口で俺を抜いていく。
「あとは自分でがんばってくれ。」と聞こえた気がする。
「ちっきしょう!絶対ついていってやる!」と思うが、コーナーと言わずストレートと言わずどんどん離されていく。
そして後ろのライダーが迫ってきた。
何度か横に並べかけられるが、必至でブロックする。
が、それも長くは続かず、レースも終盤に差し掛かった頃、1コーナー進入でついに先行を許す。
ヘルメットの中でブチッっと切れる音がした。
4コーナー侵入でインから抜き返し、そのまま1周抑えるが、またしても1コーナーで抜き返される。
そして今度は簡単に抜かせてくれない。
レースは8周を消化し、残りあと2周。
3位のままホームストレートへ帰ってくる。残りあと1周。ファイナルラップ。
「いやだ。絶対いやだ。ここまできて3位じゃ納得できん。」と真後ろにつける。スリップストリームから抜け出すと、
ブレーキングポイントの看板を無視し、抜く事のみに集中する。
そしてイン側から最初に1コーナーへ飛び込む。
「よっしゃぁぁ!」あと1周。この1周だけ。どうにか守り切れっ!
4,5コーナー、S字、スクエア、スプーン、新コーナー、ヘアピン。そしてあと一つ。最終コーナー。
「こいつを守れば。あとコーナー1つ。頼むっ。」願う気持ちで最終コーナーへ進入。
横に並ぶバイクはいない。進入は抑えた。後は立ち上がってチェッカーを受けるだけ。
最終コーナーを立ち上がる。横にバイクの気配は無い。チェッカーが振り下ろされる。
ピットのみんなが両手を上げて飛び跳ねている。
左手の拳を上げて見せる。
「ぃやった!!」
クールダウンラップ。スクエアコーナーでやっと優勝したアキラに追いつく。
指を2本たてて「2位?とった?」と聞いてくる。
ガッツポーズでそれに答え、握手する。
各コースポスト員に手を振り返す。
天にも昇る気持ちとはこのことか。
クールダウンラップを終え、ピットに戻る。いつもならここでガレージへ帰るのだが、今日は違う。
表彰台へ行かなければいけないのだ。
バイクを降り、ヘルメットを脱ぐ。みんなが祝福の言葉をかけてくれる。夢じゃない。
そして表彰式。1人ずつ選手紹介を受け、表彰台に上る。
2番目に名前が呼ばれると、夢にまで見た表彰台に立つ。
一番高いところではないが、自分で勝ち取った2位入賞。
うれしさと共にやっと実感がこみ上げてくる。
トロフィーが授与され、インタビューに答えているが、
興奮して何を言っているのか自分でも分からない。
やがて優勝者にシャンパンが手渡され、
アキラによるシャンパンファイト。
(1本しかくれない)
それを3人で回し飲み。カラカラだった喉の渇きをいやすが如く、
ゴクゴクと飲む。最高にうまい。下でみんなが笑ってる。
遠くにそびえ立つ蔵王連峰がやたら綺麗に目に映る。
こんなに高い位置から見るのはもちろん初めてだ。
なんてすがすがしいのだろう。
予選ワン・ツー。決勝ワン・ツー。
今までやってきたレースで一番感動し、思い出に残る1戦となった。
以上
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