公式予選−前編−
作成日:00/09/20
更新日:00/09/29

記:えみゅ
〜8月24日(木)もて耐予選前夜〜
夕食後、お風呂に入りいつものようにみんなで集まった。
レンガ女子風呂の関係上、1時間ほど遅れていくと既にみんなくつろいでいた。

HIROさん:「明日のボーダー何秒だと思う?」
えみゅ:(私に聞かれてもわかんないっすぅ〜)

えみゅ:「6秒」
HIROさん:「むぁじでぇ〜!?・・・ちょ、マジで6秒いくつ?」
えみゅ:(そんなんわかんないぃ〜)
えみゅ:「6秒1」(HIROさんのベストタイム)

苦笑し、言葉が出ないHIROさん。
今思えば、そんなこと言わなければよかったのかもしれない・・・
ついに公式予選当日を迎えた。6時にセットした目覚し時計より1時間早く目が覚めてしまう。
朝日がまぶしく、外は快晴。これで条件不均衡による頭取りは無くなった。不安が一つ解消される。
昨日と同じように第2パドックへ車を置き、45番ピットまで歩いて移動。
パドックの混雑ぶりと活気は楽勝で昨日をしのいでいた。ピット裏ではパーツやバイクを売りに出しているチームも多く、10年以上も前に行った全日本を彷彿とさせる。昨日はまだ空いていた駐車場も車やテントでびっしりと埋まっている。エントリー184台。単純計算でも実に2,000人近い人間が、今このパドックにいる事になる。

レスポール

クロスロード&KLEVER

記:えみゅ
朝から緊張していた。
つーか、1週間ぐらい前から何だかずっと緊張していた。
今年は書類の送付や受け取りなどを担当したせいか、去年までの受動的な立場ではないように思えて、自分にとっても本番!といった気持ちで緊張したみたい。
8時ごろパドック入りし、8:30からのブリーフィングをチーム監督のアキラさんにお願いする。
私はガソリンを買いにスタンドに行った。
前日、パニック状態だったガソリンスタンドも今日は落ち着きを取り戻している。

えみゅ:「昨日は大変でしたねぇ。」
おっちゃん:「たーいへんだったよぅ。お客さんは待たせるし、機械は壊れるし、タンクローリーは入ってくるし。大変だったぁ。」

昨日は笑顔のなかったおっちゃんも今日は笑顔だ。
もて耐はおっちゃんにとっても一大事だったらしい。(^^;
予選前のブリーフィングにアキラとトシが行く。
記:アキラ
ブリーフィングに行く。今回、監督として唯一の仕事。
その前に朝飯食わなきゃと思い、カップラーメンにお湯入れた。

その時、「予選Cグループのブリーフィングを行います」の放送

俺  「やべっ、お湯いれっちった(汗)」

周りを見渡す。暇そうな奴はいないかな。。。。あ、いた!

俺  「トシ〜おまえ暇ぁ?だったらブリーフィング行ってきてくれ!俺、朝飯食わ なきゃいけないんだよ」

トシ 「あぁ、、、いいっすよ」
スクーターで向かうトシ。

俺  「うしし、これで俺の監督としての仕事も終わったな(ずるずるっ)」

食い終わってタバコに火をつけながらタイムスケジュールを見るとまだブリーフィングの時間にはなっていない。

俺  「さっきのは10分前放送だったのか・・・。やっぱ行くかなぁ」

ブリーフィング室に行きトシを見つける。「まだ始まらないっすよぉ?」と言いたそ うな顔をしてる(汗)

俺  「ゴメン、時間間違えてた。。。」
予選は第1ライダーがA,B,Cの順で行われ、続いて第2ライダーも同じように行われる。
その集計結果で今年の予選順位が決まる。Cグループ第2ライダーの俺は一番最後。大方ボーダーは見えている頃だ。
第1、第2ライダーとも予選時間は各25分。コースインラップを含め、周回にして12周。

間もなくAグループ第1ライダーの予選が始まる時間となった。コースインゲートまでバイクを運ぶゆう。

予選出走前のてんちょ

Aグループ第1ライダーの予選直前

見知らぬ人に囲まれて不安げにうつむくゆう

でもすぐに打ち解けて仲良くなるゆう

出走直前のてんちょとKGKの山本氏

コースオープン。各車エンジンが始動され、笛の音と共に1列目から等間隔にコースへ出て行く。
いよいよ公式予選が始まった。想像も出来なかったボーダーはいったい何秒あたりになるのか。
人の予選でもドキドキする。

 9:00 公式予選開始 

記:トシ
第3ライダーだったんで、あまり緊張していませんでした。
目標タイムとして、絶対bestを更新しようと思っていました。
記:goma
去年まさか?の予選落ちから一年。
今年は国際ライダーのタイムは予選とは関係がなくなったとはいえ、
ある情報によると今年200人近い国際ライダーが降格申請をし、
その半分がもて耐に出場している?と聞いて、今年のボーダーが全く予想できない状態。
周りのチームはR1やCBR900といったVTRよりもストレートスピードが速いバイクが殆どなので、
毎年の事ながら今年も予選は厳しそうですね。

「今年こそ予選を通過する」を目標にやってきた結果がもう少しで出る。
酒でも飲まないとやってられないアキラは
バーボンをラッパ飲み

 9:00 Aグループ第1ライダー公式予選開始 

予選開始早々、ヘアピンで転倒したバイクが炎上!ライン上にオイルがまかれた為、赤旗中断。
2000年もて耐は波瀾の幕開けとなった。


消化剤でピンク色になったCBRがレッカーに乗せられて帰ってくる。予選再開。
ボーダー付近のタイムを目で追う。8秒代だったのは最初の頃だけで、予選も中盤に差し掛かると7秒代に入れてくる。
予選残りあと5分。

HIRO:「もういいよ・・この辺で勘弁してくれ・・・。」

後半更にタイムは上がり、17位は6秒に入る勢い。KGKもMUSASHIも6秒1。

HIRO:「げっ!まじかよ。6秒1出しやがった!」

これで2チームとも予選通過は間違い無いだろう。それにしても昨日始めて走って3本目の予選で6秒出すとは驚いた。自己ベストを更新したてんちょは44位。結局17位までが6秒代で予選が終了する。

HIRO:「こらぁ、負けてらんねーじゃんか。」握りこぶしに力が入る。

予選終了直後のてんちょ

続いてBグループ第1ライダーの予選。レスポールの第1ライダーは弾丸。

予選開始直前の弾丸

 9:40 Bグループ第1ライダー公式予選開始 

Aグループに触発されたのか、Bグループの予選は更に激化する。何と24位までが6秒代で、17位は6秒前半。

HIRO:「まじかよ・・。あいつまた当てやがった。」

アキラとの会話を思い出す。それはやっと7秒を切った第2回公開練習の帰り道・・・。

















アキラ:「6秒出て良かったね。」

HIRO:「ん〜。良かったよぉ〜。」

アキラ:「どうよ?あと0.4秒くらい。」

HIRO:「あぁ。いくよ。」

アキラ:「そっか。んじゃそろそろ決勝の計画立てないとな。」

HIRO:「あ、あのなっ!今年は大丈夫だって。早くても7秒前半あたりっしょ。」

アキラ:「いやぁ、そうかもしんないけどさ、まぁ去年よりちょっと遅いって感じで。」

HIRO:「そうかなぁ。データ分析すると8秒前半なんだけどね。」

アキラ:「まぁ、どの道通るんだし、大丈夫だね。」

HIRO:「おーたが通って、俺が更に順位を上げる。問題ねーよ。」

アキラ:「そうだよね。」
HIRO:(去年よりちょっと遅い・・・か。)
















この時点で6秒中盤以上は間違い無くなった。これが今年のもて耐だ。もうすぐBグループの予選が終わる。次はいよいよおーたの番だ。
記:アキラ
Aグループから予選が始まる、続々とピットアウトしていくマシン。
みんなはモニターに釘付けだ。ボーダーと思われる付近のタイムは6秒半ばくらい

「やっぱり6秒台か。予想はしていたけどじっさいに見るとドキドキするなぁ」

だけど大丈夫だ。HIROがベストタイムを出せば予選は必ず通過する。今年のコンパスに予選落ちは決してない。しかし、そうは思っているものの、予選が近づくにつれて緊張してしまう。
HIROも不安そうだ。

HIRO 「あのさぁ〜、昨日みたいにバイク遅かったらどうしよぉ。俺タイム出ないよ」

言いたいことはわかる。ライダーは不確定要素があると集中できないし訳もなく不安な思いに苛まれてしまうものだ。ここは一発、監督として一言。。。

俺 「心配ない、今日はバイク速いから。ベストタイムを出せば必ず予選は通る」

なんの根拠もないが、自分の素直な気持ちを言った。ホントにそう思ったのだ。
無責任と言われればそうだけど、俺の無責任は今始まったことではない(キッパリ)

おーた:「5周計測で戻ってくるから。」

HIRO:「えっ!なんで?マジ?」

おーた:「バイク温存する。7秒ならなんとか頑張る気になるけど、今の実力で6秒は無理だ。」

一同:「・・・。」

HIRO:「いいけど、精一杯走ってきてね。」

おーた:「それはモチロン。」

記:おーた
A組、B組のタイムを見るとボーダータイムは2分6秒前半から中盤っていったところ。

「6秒はちょっと無理だな...」

今年は、タイム出しは自分だと思っていたが、ずっとタイムが伸び悩んでベストは2分9秒6という状態。
どう考えても、今の自分の実力では、6秒代は無理だと考え、周回を減らして、マシンを温存することにした。
自分の中ではいろいろと思うことがあったが、とにかく決勝を走るために1年間準備をしてきたことを考えて決断した。
記:えみゅ
予選時間が近づくに連れ、おーたさんはだんだん無口になって考え込んでいる様子。
Aグループ・Bグループの予選タイムを見ると6秒台、7秒台、8秒台と結構いたりする。

おーたさん:「5周計測で戻ってくるから周回出して」
えにゅ:「な、なんで?25分もあるのに5周しか走らないの????」
おーたさん:「バイク温存。今の自分のタイムじゃ6秒台は無理。だったらバイク温存したほうがいい。」

笑いながら答えるおーたさん。
ライダーでありVTR君のメカニックでもある本人がいいと言ってる以上なにも言えない。
Cグループ第1ライダーの予選は10:20の予定だったがAグループの赤旗(たぶん)の影響で5分遅れの10:25スタートとなった。
直前になって5周計測を4周に変更。
VTR君は先にピットレーン出口に並べていたのでおーたさんはスクーターで送ってもらうことになった。

えみゅ:「んじゃ、がんばって」
おーたさん:「うぃ〜」

グローブをはめたおーたさんと手をパンッ!と当てるとサインガードの脚立に座った。
記:goma
えっ? なんでぇ〜。そんなにバイクはお疲れなの? おーたさんだって思い切り走りたいはずなのに・・・ なんか、頭に疑問符がぶるさがったまま見送るしか出来ない私・・・。
予選を一任された。聞いた時は驚いたが、冷静に考えてみるとおーたの判断は賢明なのかもしれない。
その場にいなかったアキラに報告する。

アキラ:「えぇっ!マジ?」

HIRO:「バイク温存するんだって。俺だって驚いたよ。」

アキラ:「そっか、おーたさんにも思いっきり頑張って欲しかったんだけどな・・・。」

HIRO:「でも全開で走ってくるって言ってたし・・・おーたの判断だから・・・。」
記:アキラ
Cグループの予選が始まった。おーたさんはタイム出しをやめてタイヤの温存とマシンの最終チェックをするらしい。(よく事態を把握していない、こんなんでも監督)
俺としては全開で走って貰いたかったが、おーたさん自身が決めたことだから従うことにした。
予選の準備を始めるおーた。すぅさんがバイクをコースインゲートへ運ぶ。

俺は準備が完了したおーたをスクーターで1番ピットまで運ぶ。


 10:20 Cグループ第1ライダー公式予選開始 

コースイン!

おーたの予選が始まった。モニターから目が離せない。祈る気持ちでおーたのタイムを追う。
もしバイクが昨日と同じ状態だったら俺が乗っても6秒前半なんて無理に決まってる。おーたには自己ベストを更新してもらい、せめて9秒前半・・・いや、もうこのさい10秒切ってくれればいい。あとは俺がなんとかする!
記:goma
A,Bの予選タイムを見る限り、やはりボーダーは6秒前半となりそうな気配
予選ボーダータイムの話を昨晩から何百回となく、言い続けていたHIRO。
そーとーなプレッシャーを感じているようだ。
ウィークに入って一日目の絶好調タイムから、昨日の走行ではタイムが2秒近く落ちている。
その理由もはっきりしないまま。

そして、今年も磯間さんの予想タイムに近いタイムになりそうだ。
ホームストレートを通過するおーた。1周目14秒5。
いつも計測1周目は慎重なおーた。前後新品タイヤなので、尚更の事だろう。
2周目は12秒前半。

HIRO:「次だ。次のラップは10秒で帰ってきてくれ・・。」

その3周目、11秒9。4周計測ならもうラストラップに入っている。

HIRO:「頼む。あと2秒。」

しかし最後の4周目、タイムは落ち、12秒後半。ピットへ帰ってくるおーた。

昨日の最後と同じだ。いや、きっとバイクは復活してるけど、引っかかってたに違いない。都合のいい解釈で焦る気持ちを抑える。

記:おーた
新品タイヤのためS字をぬけるまで慎重に走る。
ヘヤピンを抜けてフルスロットル!!

「あんまりはやくね〜な」

ダウンヒルで確認したところマシンがそれほど早くないことに気づいた。
200m看板手前でも完全にふけ切らない。
速いマシンにどんどん抜かれていく。
そうしているうちに、前からマシンが現れはじめた。
去年のこともあって今年は4気筒の大排気量車のエントリーがが多い。
俺らのマシンはストレートがあまり速くないので、前を走られると途端にタイムが落ちてしまう。

「とにかく抜いていかないとダメだ」

前からくるマシンにストレートで離され、コーナで追いつき、
やっと集団を抜けたところで、予定していた4周を使いはたしてしまった。

「タイム的に納得がいかないが、しょうがないな」

気持ち的に、もう少し走りたかったのだが、水温の上昇と、
途中ダウンヒルでシフトタッチに異常を感じたのでPITにもどる。
記:えみゅ
22日にベストを更新しているけど、その後調子の上がらないおーたさんのタイムが心配だった。
なんかこっちまで緊張。
サインボードに周回数「4」を出し、ホームストレートに帰ってくるのを待つ。
しばらくしてホームストレート通過、計測開始。

1周目、2’14”57。似たような赤いバイクの72番が紛らわしい。
2周目、2’12”31。やっぱりタイムが上がらない。
3周目、2’12”04。72番のバイクに気を取られて危うく見逃すところだった。(汗)
4周目、2’12”95。このとき、PIT INサインを出す。

ベストは3周目。計測機器では2’11”962でCグループ34番目。
前日に詰め直したサイレンサーのグラスウールはあまり効果がなかったようだ。
記:goma
おーたさんが予定周回を終えてピットに戻ってきた。
なんと言っていいやら、分からない。
レースのかけひきなんて素人の私が口を挟む問題ではないけれど、ちょっぴり寂しく思えた。
記:アキラ
コース上は混んでいる。おーたさんも走りづらそうだ。クリアラップは取れそうにない。
クリアが取れないまま4周を終えて帰ってくるおーたさん。タイムは11秒9。
次はHIROの出番だ。
HIRO:「バイクどう?」

おーた:「昨日と同じ!」

おーた:「俺にしては結構頑張ったんだけど。」

HIRO:「・・・そう・・。」

切なる願いもむなしく砕かれ、絶望的な気分になった。おーたより5秒・・・いや、6秒も速く走らないと目標どころか予選通過も出来なくなった。

第1ライダーの予選が終わった。この時点でボーダーは6秒8。第2ライダーの予選で更に上がるだろう。6秒前半は必至だ。

記:おーた
すぐ着替えて、シフトリンケージをチェックをしたところ、
シフトペダルとリンクをつないでいるボルトが緩んでいたのを発見、
このまま走り続けると、シフトが出来なくなるようなトラブルだった。

「よかった」

とにかくやれることはやっておこうと、走行抵抗になりそうなブレーキ、チェーン、
吸気系のメンテナンスを行ったが、
今思えば、当日の暑さでは、ちょっとMJが濃かったのかもしれない。

着替えたおーたはすぅさんとエアクリーナの掃除や走行抵抗となる個所のメンテナンスをしている。
Cグループ第1ライダーの公式予選が終了した。

記:おーた
ボーダータイムは、去年とほとんど変わらず2分6秒3あたり。

「結局、去年と0.3秒しかかわらないじゃん。国内ライセンスもみんなはやいな」

今年も厳しい予選となった。
記:goma
やはり、6秒前半のタイムを出さないと去年同様の結果になることが明確になってしまった。
おーたさんが走った感じでは昨日と大差なく、あまり調子が良くないらしい。
今までもおーたさんのタイムより3秒以上早く走っていないのに、大丈夫かなぁぁぁ。
不安がよぎる・・・一番不安なのは本人なのに
 11:00 Aグループ第2ライダー公式予選開始 

ピット裏に設営したテントからVTRの整備をぼぉ〜と見ているHIRO。

HIRO:(昨日と同じかよ・・・まいった・・。)

アキラ:「大丈夫だって。自己ベスト更新すりゃいいんだから。」

HIRO:「バイク昨日と同じだって。」

アキラ:「えっ!うそ!?」

HIRO:「ほんと。おーた言ってた。」

アキラ:「でも予選になればタイム出るから。」

HIRO:「昨日の8秒だって結構必死で出したタイムだったんだ。」

眉間にしわを寄せ、黙ってうつむくアキラ。

 11:40 Bグループ第2ライダー公式予選開始 

おーた:「やれる事は全てやった。」

整備を終えたおーたが汗だくでテントに入ってくる。黙ってうなずく俺。

おーた:「転んでいいよ!」

HIRO:「・・・よっしゃ!」

今まで何度か「転んでいい?」と聞く度に「まだダメ」と言われ続けてきたが、予選を目の前にしてやっと転倒禁止令が解除された。これで何の遠慮も無く攻め込んでいける。いけるとこまでいってやる。

記:えみゅ
汗だくのおーたさんはテント下でクールダウン。
またまたなんか考え込んでいる様子・・・
テント下のテーブルの周りにはみんなが集まっていた。

おーたさんが笑いながら「転んでもいいからね。」
苦笑するHIROさんと小さな声で「了解」とうなずくトシさん。
「お前が了解するな!!」と突っ込み大爆笑。
HIRO:「ちょっとポジション合わせたいから付き合って。」

VTRにまたがり、ハンドルの角度とシフト位置を自分の体に合わせ、調整する。


HIRO:「んじゃ、バイクお願いします。」

すぅさんとおーたにバイクを頼み、つなぎに着替え始める。
記:おーた
とにかくマシンを少しでも前に並べるため、
B組の予選終了前にすぅさんと4番ピットの前までマシンを押していく。
先に並んでいるのはTSRのみ。
なんか忘れているような気がするので再度各部をチェックすると、
なんとタンクとガソリンチューブを繋ぐのを忘れていた。
あわてて、近くのピットに駆け込む。

俺: 「すんませ〜ん。8mmのボックスとラチェットをかしてください」
ピットの人:「はい、これでいい?」
俺: 「すみません。おかりします。」

そうしているうちにチェッカーが出て、並んでいたマシンが一斉に移動を始めた。
俺らは出遅れ結局4列目ぐらい。

借りた工具でタンクを外し、ホースを繋ぎ再度マシンチェック
「今度こそは完璧だ!!」
Bグループの予選にチェッカーが振られた。刻一刻とCグループの予選が近づく。

つなぎに着替え、頭にタオルを巻く。
記:goma
いつものように精神集中している。
それを遠目に見ながらベストタイムの更新と今年のもて耐での彼自信の目標をクリアーできる様に見守る事 ぐらいしか出来ない。

アキラ:「頼んだよ。」

HIRO:「・・・ふぅ〜。」

HIRO:「俺、のっぴきならねえぇ用を思い出した!」

アキラ:「の、のっぴきって・・・突然何よ。」

HIRO:「予選行かねーと!忘れてた。」

アキラ:「予選?いいじゃん。そんなもん。」

HIRO:「いや、なるべく急いで行って来るから。」

HIRO:「飯は帰ってきてから食う!」

HIRO:「風呂沸かしといて!」

HIRO:「んじゃ行って来るわ。」

アキラ:「頑張ってなっ!」

HIRO:「おぅ!」

予選開始10分前。コンセントレーションはいい具合だ。俺の場合、これくらいで丁度いい。ピットを後にし、VTRの待つコースインゲートへ向かう。

記:アキラ
実質最後の予選だ。これが終わればすぐに暫定予選結果が出るだろう。
コンパス全員に緊張感が感じられる。全てはHIROの走りにかかっているんだ。

「いいなぁ・・・」心の中で思った。みんなの期待に応えるために走る。ライダー冥利に尽きる。
予選が終わればチームみんなに「凄げぇな!」とか「やったな!」と声をかけられるんだ。
俺だったらニヤニヤしてしまうシチュエーション。この時だけは俺が走りたいと思ってしまった。

HIROは緊張しているが引き締まったいい顔をしている。

俺 「一発、やってこいよ。」

無言で頷くHIRO。もうひとつ言ってみる。

「焦らず、急いで、正確に。」

これが一番難しいが、あえて言ってみた。
混雑したコース上で焦ったら負けだ。落ち着いてクリアを探し、タイムを出して貰いたい。
20分の予選ではミスも許されないが、条件は全てのライダーが一緒である。

VTRにも手を合わせてお願いする。

「たのむよ!」

VTR君は 「たのむよって言われてもなぁ・・・」みたいな顔をしていたがそこをなんとかお願いする。

HIROの予選が始まった。
記:goma
遂にこの時が来た。いつもにも増して緊張しているのが私にも伝わってくる。
「大丈夫!きっと出来るよ」と言って見送った

VTRは4列目に並べられていた。ヘルメットとグローブを装着し、おーたとすぅさんからVTRを受け取る。

HIRO:「ども。」

予選開始3分前。VTRから離れるおーたとすぅさん。無言の合図にヘルメットを傾ける。

HIRO:「4列目か。とりあえず抜けるだけ抜いてこ。」

予選開始1分前。コントロールラインにカウントダウンが表示される。エンジン始動。

エンジンの鼓動を感じながら、天をあおぐ。


HIRO:(大丈夫だ。バイクはきっと速くなっている。)

続く

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