公式練習(8月26日)
作成日:99/09/01
更新日:99/09/02

8月25日、水曜日夜。北ゲート前。

いよいよ7耐ウィークに突入した。明日は公式練習初日。嬉しい事に今年は公式練習が2日取られている。
とは言ってもエントリー台数が多いので、1人当たりの走れる練習時間は結局去年と同じだが。

北ゲートの警備員と話をしている兄ちゃんがいる。去年は公式練習前日の夜からパドックに入れたのだが、今年は入れないらしい。
車の中で酒を飲みつつ、暫くの間知り合いの到着を待つが、来る気配も無いので寝る事にする。

寝ようとしても眠れないのは分かっていた。予選のプレッシャーで、今週はずっとこんな調子だった。



朝5時。警備員に窓ガラスを叩かれ、目が覚める。6時ゲートオープンのはずだったが、1時間早めたらしい。既に30台ほどのトランポが並んでいた。天気は曇り。いつ降り出してもおかしくない雲行き。

パドックに入ると、各ピット及びピット裏の駐車場では、場所取りの争奪戦が繰り広げられていた。何しろ1ピット最大4チーム入る為、ピット内での場所取りも重要となってくる。
俺らは前日からおーたが場所取りをやっており、電源やエアの確保も済んでいた。35番ピットのシャッターを開けると、手前左側に見慣れた荷物と赤いVTRが置かれている。

暫くしてKLEVERと合流。指定ピットが別だった為、35番ピットのチームにピット変更をお願いし、KLEVERは俺らと同じピットへ入る。

今日も朝から忙しそうなKLEVER

受付を済ませ、ガソリンを買う。今日の走行は有料となる。
今日、明日は各グループ毎に走行が行われる。A,B,Cグループに分けられ、俺らはBグループでKLEVERはAグループ。
各グループとも30分×2本と45分が1本。この合計3本が今日、明日とも同じスケジュールで行われる。

走行の順番は、1本目がトシからおーたへチェンジ。2本目はトシから俺へチェンジ。3本目はおーたから俺へチェンジ。3人とも2本走れるが、予選タイムに影響しないトシの走行時間だけが少々少なくなる。

しかし8時頃、携帯が鳴る。

俺:「もしもし。」

トシ:「あ。もしもし。思いっきり寝坊した。」

自宅からだった。今起きたばかりらしい。あの、のんびりとした性格がたまに羨ましくなる。
走行もあと1時間となった頃、おーたとえみゅ〜が到着する。

トシは午後からなので、1本目はおーた、2本目に俺がそれぞれ1本ずつ走る事にする。走行時間中のライダーチェンジは無駄なので、なるべく避けた方がいい。

バイクの方は前後新品タイヤ、チェーン新品、ブレーキパッド新品。パッドの使用時間はやはり3.5時間だ。
又、以前から排気音がうるさいのと、パワー不足が気になっていた為、おーたが自宅でサイレンサーをオーバーホールしてきた。開けたサイレンサーにグラスウールはほんの少ししか入っていなかったそうだ。

午前9時30分。Bグループの走行開始。おーた出動。フロントのイニシャルは4目盛り。

タイヤもパッドも新品の為、1周目は慎重に走る。そして2周目から全開走行開始。15秒から始まり、14秒、13秒と周回毎に1秒ずつ詰めていく。

俺:「次は12秒かな?」

12秒で通過するおーた。

俺:「はっはっは。マジで1秒ずつ詰めてるな。次、11秒だから。」

その通り、11秒代で通過。しかも自己ベスト。11秒78。

俺:「すっげー。残り5周は出来るはずだから、このまま行けば、えっと・・・6秒代が出るカモ。(笑)」

しかし、ここからは他車と絡み始め、13秒から14秒で走行を終える。ピットへ帰ってくるおーた。

俺:「サクッと11秒出た感じだね。」

おーた:「うん。中速が良くなった。S字で4速に入るようになったし。」

サイレンサーにグラスウールを入れた事で中速のパワーが上がったようだ。これは期待出来る。

今年の予選通過タイムは8秒後半から9秒前半と読んでいる。今の所、俺のベストタイムは9秒前半。今日中になんとしても8秒代に入れておきたい。予選本番では何があるか分からない。ストレートの速い奴に引っかかったら終わりだ。その為にも練習で目標タイムをクリアしておく必要がある。

今年の目標タイムは8秒代中盤あたりだ。



俺:(走行中、タイムは気にするな。走る事だけ考えろ。」

予選は、そのタイムで全てが決まる。レースの世界ではタイムがライダーの力を決めてると言ってもいい。
俺の場合、この一番気になるタイムを気にするとタイムが出ない傾向がある。メンタルコントロールの難しい所だ。

11時30分。走行まで後15分。パラパラと雨が降り始めた。

ここの所、俺が走ろうと思うと必ず雨が降る。しかし、もういちいち気にしてる余裕も無い。このまま降り続けない事を願い、必死に精神の統一を維持し、つなぎに着替える。
フロントのイニシャルは、前回3目盛りで走った時にリアが浮き始めたので、今度は3目盛り半で走ってみる事にする。

Bグループ2本目、出走直前

11時40分。Bグループ2本目の走行開始まで後5分。早目にコースインゲートへ並ぶ。

11時45分。グリーンシグナル点灯。2台ずつ間隔を開けてコースイン。

雨はパラパラと降っているが、今の所路面はほぼドライ。慎重に周回を重ねる。

1周目、20秒、2周目、18秒、3周目、14秒。

この辺りからスクリーンに付く雨粒も殆ど無くなってきた。路面も滑る気配が無い。又いつ雨が降ってくるか分からないので、今日はもうこの1本で終わりかもしれない。全力でタイムアタック開始。

4周目、11秒91。5周目、11秒64。6周目、11秒07。

確かに開け始めから全開域までのパワーが上がっている。これなら行けそうだ。

7周目、10秒83。8周目、10秒48。9周目、9秒98。
10周目、前車をパスするのにタイムを落とし、10秒33。もう時間が無い。

俺:(焦るな・・・この勢いを持続しろ・・・。)

そして11周目、ついに9秒を切り、8秒91。自己ベスト更新。

最終ラップを9秒46で終え、ピットへ戻る。なんとか9秒を切ったが、たったの0.1秒。計測誤差の範囲だが、やっと8秒代が見えてきた。




トシが到着し、みんなで昼飯を食う。あと今日残されているのは午後の1本、45分。これを1人5周ずつ走る事にする。

ってな事を話し合っていると、先程とは違い、今度は本格的な雨が降ってくる。

俺:「やっぱ今日はもう終わりか・・・。」

しかし、ドライバーズサロンを出る頃には太陽が出ている。今日もライダーの心理を揺さぶるもてぎウェザーだ。

午後に入り、メカニックのえいじが到着する。みのから借りたクイックチャージャーを持ってきてくれた。

午後からのAグループの走行が始まった。
各チームのサインボードを見ていると、6秒、7秒あたりも結構いる。

午後2時30分。Bグループ今日最後の走行。まず、トシがコースイン。コース上は完全ドライ。イニシャルはおーたと同じ4目盛り半。

ここまでトシは、乗る毎にそのベストタイムを2秒ずつ更新している。彼が初めてこのVTRに乗ったのが2回目の公開練習日、8月2日。
初走行で19秒。同じ日の2本目で17秒。6日、7日と東コースを走り、フルコース最後の練習日である8月12日は2周目から15秒を出している。この調子で行くと今日は13秒が出る事になる。
1周目17秒から、2周目、3周目と15秒。4周目に14秒。そして最終ラップにキッチリ13秒を出してきた。まさに2秒マジック!
解説 〜2秒マジック〜
 走行毎に2秒ずつベストタイムを縮める事。
ピットインしてくるトシ。おーたにライダー交代。速効でピットアウト。

俺:「出たよ。最終ラップ13。」

トシ:「えっ。マジ?」

1周目12秒から入るおーた。しかし、集団に捕まり、その後4周全て13秒。
サインボードと同時に両手でピットインを促す。俺はピットへ戻ると、ヘルメットとグローブを装着し、おーたを待つ。

俺:(これが予選だと思え。今日はこれで最後だ。キッチリ目標タイムをクリアして明日を迎えてやる。)

ピットインしてきたおーたと交代し、速効で両方のイニシャルを1目盛り入れ、3目盛り半とする。

コースインし、1〜2コーナーを周ってると3台に抜かれる。タイヤは充分すぎるくらい暖まっている。いきなり全開。

3コーナーの進入で先程抜かれた集団に捕まる。ラインを1本イン側に取り、ブレーキングで1台かわす。
4コーナーを立ち上がり、5コーナーの進入で次の2台をかわそうとするが、ラインがふさがれている為、一旦引いて後ろに付く。その瞬間、先程抜いたバイクにインを刺される。かなり強引な抜き方だ。

俺:(おもしれーじゃんか。)

130Rを立ち上がり、S字の進入でアウト側から1台。切り返してバイクを立ち上がりラインに乗せ、Vコーナーの進入でイン側にバイクをねじ込み1台。ヘアピンを立ち上がり、ダウンヒルのブレーキングを遅らせ、90°コーナーの立ち上がりでピッタリと最後の1台に付ける。
セカンドアンダーをくぐり、最終コーナー手前でこれまた強引にイン側からパス。

俺:(わりーね。今ちょっと急いでるんだ。)

最終コーナーを立ち上がる。1コーナーに1台バイクが見える。

俺:(よしっ。クリアラップだ。)

計測開始から1周目、10秒94。2周目に9秒89。3周目に8秒67。自己ベスト更新。

俺:(まだだ。まだいける。)

しかし絶妙のクリアラップもこれまで。1コーナーでついにストレートの速いスーパーブラックバードに捕まってしまう。

俺:(ブラックバードか・・・。)

3コーナー、5コーナーのストレートで離されては、ブレーキングで前を塞がれてしまう。

俺:(いつものパターンで行くしかねーな。)

S字を同時に立ち上がり、Vコーナーのブレーキングで並びかけるが、アウト側から容赦無くかぶせられる。

俺:(あぶねっ!)

VTRのフロントタイヤギリギリの所をフルバンクで走っていく。接触を避け、思いっきりフロントブレーキを握り締める俺。リアが上がり、グラッと来たかと思うと、そのままグラベルへ一直線。コースの端ギリギリでやっとバイクを曲げる事が出来、間一髪でコースアウトを免れた。

この周のタイムは9秒29。これで集中力も切れ、頑張ったつもりの最終ラップは10秒20。本日全ての走行が終了した。




バイクの前に座り、VTRを眺めるおーた。

おーた:「えぇ〜っと。特にする事ねぇなぁ。」

俺:「トラブらないってほんっと、いいねぇ。」


木曜日の夕方に、現地で受け渡し約束をしていたタイヤをミシュランサービスに受け取りに行く。
担当の人とは電話でしか話をした事が無いので、顔を知っているKureに付き合ってもらう。
当初、パイロットレースの深刻な在庫不足に頭を抱えていたが、こういったレース仲間の助けにより、決勝用の2セットを確保する事が出来た。

今日のKLEVER

昨日同様、ピットにバイクを置き、パドックを後にする。今日は車泊の予定だったが、KLEVERと共にレンガへ泊る。


12時半まで宴会の後、疲れきった体を休める。目標タイムをクリアした事で少し安心したのか、久しぶりにすぐ眠りに就く事が出来た。



宴会終了後30分程で、てんちょとアキラがレンガに到着する。

暗い部屋のドアを開け、電気を点けると、部屋の中には弾丸とカエルが一匹。

アキラ:「あら?弾丸とカエルしかいねーじゃんか。」

てんちょ:「俺らここで寝ていいみたいね。」

アキラ:「とりあえず、写真撮っときますか。」

弾丸とカエル(その1) 弾丸とカエル(その2)



セッティングデータ
ノーマル今日のセッティング(スプリング変更)
サスペンション
(フロント)
突き出し0o7o
油面130mm150mm
イニシャル4目盛り3目盛り半〜4目盛り半
ダンパー最強から1回転戻し最強から1/2回転戻し
サスペンション
(リア)
車高0o5o上げ
イニシャル最弱から2段目最弱から3段目
ダンパー最強から1回転戻し最強から1/2回転戻し
メインジェットF165、R162(国内仕様)F175/R178

今日のベストタイム
HIRO2分08秒67自己ベスト更新
おーた2分11秒78自己ベスト更新
トシ2分13秒65自己ベスト更新

一応、3人とも自己ベストを更新した1日となった。個人的にも目標タイムをクリアする事が出来たが、これはたった1周のタイムだし、1台引っかかるとすぐにタイムが落ちてしまう。予選でもクリアラップが取れる保証は無いので、出来ればもう少しタイムを縮めておきたかった。
しかしながら、今日の感覚からすると7秒代も見えてきた。明日は更にタイムを伸ばし、8秒コンスタントで走れるようになっておきたい。そして最終目標の7秒代をぶちかましたい所だ。

以上

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