公式予選
作成日:99/09/04
更新日:99/09/07

Bグループ第2ライダーの予選中。タイムが出ないまま、もう残りあと1,2周しか無い。

俺:(くっそぉ。こいつさえ抜ければ・・・。)

ダウンヒルストレートで前を行くCBR600のスリップに付き、下った所で右側にバイクを振る。1台分のラインを外し、170メートルまでブレーキを我慢する。

俺:(抜けた!)

そして思いっきりガツンとフルブレーキング。

握り込む程にブレーキレバーは指を挟み、グリップに当たる。

俺:(げっ!止まれないっ!)

俺:「はぁっ!」がばっ。

トシ:「んぐおぉ〜〜〜・・・んんぐおぉ〜〜〜・・・んぐぐぐおぉぉぉ〜・・・ぐはふっ・・・

俺:「・・・・・。」

時計を見ると、朝の5時。目覚ましは6時にセットしてある。喉の渇きを覚え、冷たいお茶を飲む。
少しでも寝ようと再びベットにもぐるが、予選の事を考えてしまい、結局寝られないまま、起床時間の6時となった。

ついに予選当日の朝を迎えた。

今日は、まずブリーフィングから。ブリーフィングは各グループ毎に行われ、第1ライダーとチーム監督の参加となる。
Bグループのブリーフィングは7時20分から出席確認が始まる。本来はチーム監督のgomaが出席しなければいけない所を、えみゅ〜に代わってもらう。7時から始まるホテルの朝食を10分で済ませ、ブリーフィングに出かけるおーたとえみゅ〜。

2人に遅れる事10分。パドック入り。今日からメカニックのすぅ、もり及びヘルパーのカズが加わる。
挨拶もそこそこにし、俺は真っ直ぐVTRに向かう。ピット前へVTRを運び、エンジンをかける。昨日はサイレンサーのグラスウールを換えてからエンジンをかけてなかった為、音が気になっていたからだ。
エンジンオイルが暖まるのを待ち、少しずつ回転を上げていく。

俺:(多少静かになった気もするけど、あんま変わってないような・・・。)

バイクを一旦ピットに戻し、ブレーキレバーを握り締める。レバーのアジャスターを一番遠くにすれば、レバーがグリップに当たる事は無い。

俺:(気にしすぎかな・・・。)

ブリーフィングから戻ってきたおーたがクルー全員に、内容の報告を行う。

おーた:「ライダーの注意事項多いから。良く聞いておいて。」

連絡事項
・ピットロードは85キロ以下。違反した場合は1万円の罰金。決勝では20秒のピットストップ。
・ピットロードはピットアウトする車両より、ピットインする車両を優先とする。
・ショートカットは走行禁止。走行した場合は、それ以降の予選タイムは無効とする。
・サンダル履きでのピットレーン横断禁止。
・フルコースコーション時のピット出口は列の最後尾が通過して10秒間だけOPENする。
・フルコースコーション時は追い越し禁止。
・70Km,70分、7Hそれぞれの決勝は、サイティングラップ後、ウオーミングアップラップを行った後、再度グリッドについてからスタートを行う。
・エアーツール、電動ツールのピット内持ち込み禁止。現在、ピット内にあるものはピットから撤去する。

エントラントからの質問
Q.防火服は必ずピットの作業を行う人数分準備するのか?(HARC−PRO代表)
A.できるだけ難燃性のもので長袖を来てもらいたいのでレギュレーションブックに明記した。強制ではない。

Q.防爆剤のチェック、エアーボックスのチェックをしてないようだが、その見解は?(エイジュウプロ代表)
A.レギュレーションに則って行ってます。(車検長がいなかったのでモテギの若い人が答えた。答えになっておらず。)

Q.3Hシードチームは、予選通過50台にカウントされるのか?(Compus)
A.予選通過タイムを出した場合には、50台にカウントします。通過できなかった場合には、推薦枠で出走することとなります。

Q.ピットアウト時にいきなりライン上を走行する車両が多くあるので、レギュレーションブック等に図解で注意してほしい。(????)
A.来年の検討事項とさせてください。
ミーティングが終わり、暫くするとAグループ第1ライダーの予選が始まる時間となった。Kureの出番。

予選は各グループ別に第1ライダーから行われる。まず、第1ライダーの予選がA,B,Cグループ順に行われ、次に第2ライダーのA,B,Cグループ。続く第3ライダーは2グループしかない為、A,Bグループのみで、最後に補欠ライダーの予選となる。走行時間は、第1ライダーと第2ライダーが25分。第3ライダーと補欠ライダーが20分。

予選出動のKure

いよいよ公式予選が開始された。モニターに表示されるボーダー付近のタイムを追う。
出走は55台。ボーダーは16位付近。

予選開始から10分が経過。トップ6台は3秒から4秒に入れている。7秒代、8秒代が異様に多い。ボーダー付近のタイムは・・・。

その時、別のコースカメラは転倒したKureを映し出していた。

俺:「あっ!Kureさん転んだっ!」

場所を確認し、バイクを回収しにいく弾丸とdevil。

モニターを見ていると、辛くなってくる。今出来る事はコンセントレーションを整える事だ。人の予選を見たからといってタイムが出る訳じゃない。モニターから目を離し、椅子に座り、気持ちを落ち着かせる。

やがて転倒したSDRがピットに運ばれてくる。もう自分以外の事を気にするのは止めよう。

Aグループ第1ライダーの予選が終了した。

モニターで今の予選結果を見る。ボーダーと予想される16位のタイムは、何と7秒フラット!55台中、33台が10秒を切り、一桁に入れている。9秒や10秒じゃ話にならないのは明白だった。

俺:(7秒か・・・。)

おーたがつなぎに着替え始めた。間もなくBグループ第1ライダーの予選が始まる。



Bグループ第1ライダーの予選直前

VTRのエンジンをかけるおーた。その表情にいつもの笑顔は消えている。


そして午前9時5分。Bグループ第1ライダーの予選が開始された。


おーたを見送り、ピットのモニターを見る。トップ集団は1周目から4秒、5秒で通過していく。出走は57台。

おーたは12秒から13秒で周回している。ホームストレート通過時の音もあまり静かになってない。昨夜詰め込んだグラスウールの効果はあまり現れていないようだった。

突然おーたがピットインしてくる。何事かと駆け寄ると、何とガス欠!

俺:「えっ!?なっ。ガス欠ぅ!?」

おーた:「ガソリン給油していいかどうか聞いてきて。」

オフィシャルの所へ走って聞きに行くgoma。こっちはいつでも給油出来るように準備だけしておく。
暫くし、両手で○サインを送りながら走ってくるgoma。

即座に給油開始。予選終了まであと10分も無い。5リットル程入れ、再びピットアウト。

再度計測開始から3周連続で11秒後半のタイム。Bグループ第1ライダーの予選が終了した。
結果は2分11秒863で57台中、37番手。

おーたがピットに戻って来る。バイクを降り、ヘルメットを脱ぐとブレーキの不調を訴える。

おーた:「やっぱブレーキおかしい。」

ブレーキレバーを握ると、又しても完全にレバーがグリップに当たるようになっていた。不完全燃焼気味のおーた。悔しそう。
おーたの感想
コースイン直前にブレーキの異変に気づいて、レバーをもっとも遠い位置にして走ったが、すぐレバーが近くなり、タッチが安定せず、ブレーキングがうまくできない状態になってしまった。
そうしてるうちに、燃料警告灯が点いたが、「ガソリン入れた?」とみんなに言ったので大丈夫かなと思いながら走っていると、ダウンヒルの途中でガス欠症状になり、慌ててピットインした。
ガスを入れて出ていったが、既に集中力が切れてるのと、ブレーキが安定しないので終了って感じ。
ブレーキ以外はマシン的には問題なし!!
俺の予選まで、あと1時間半しかない。俺がこの状態で走ったら11秒も出ないだろう。
ディスクの厚さを測るが、正常値内。メカニックにエア抜きをしてもらうが、症状が変わる事は無い。新品のパッドはもう決勝で使う予定のノーマルが4セットあるだけだ。

俺:「こんなんじゃ、俺乗れない・・・。」

予選直前に発生した原因不明のブレーキトラブル。エア抜きは続けられる。

この頃から俺は右キャリパーだけノーマルのブレーキパッドを使う覚悟でいた。このままエア抜きを続けていても改善される気配は無いし、厚さがある分、今の状態よりはまだましだろうと思ったからだ。

俺:(パッドの変更・・・ちょっと待てよ。)

公式練習日に、ブレーキパッドを宣伝に来ていた人の事を思い出す。8耐でも実績があり、8時間無交換でOK。ブレーキの効きも抜群で、一度使ったら病み付きになると営業口調で説明していた。

その時は、テストもせずに本番直前で今更パッドを変更する気にもなれず、適当に受け流していた。

俺:(PFCとか言ってたな。)

速効でPFCのピットへ行ってみるが、担当者不在。その足で今度は別のブレーキメーカー、PLUSμのピットへ行ってみるが、こちらもやはり担当者不在。
VTRのパッドが欲しい旨を伝えると、PLUSμの関係者と思われる人がトランポの中を探し始めた。

関係者と思われる人:「えぇっとぉ・・・。お急ぎですか?」

俺:「あ。はい。もう次予選なんで、それまでに間に合わないと・・・。」

関係者と思われる人:「あぁ。そうですか。ちょっと待って下さいねぇ。」

と、又トランポの中をゴソゴソ捜しまわっている。

関係者と思われる人:「う〜ん・・・ねぇなぁ・・・。。」

俺:「あ、あのっ、一旦ピット戻ってます。」

エア抜きしてくれているVTRの状態が気になり、ピット番号とゼッケンを伝え、ピットへ戻る。

ピットへ戻るが、状況は相変わらずだった。Cグループ第1ライダーの予選が終わり、Aグループ第2ライダーの予選が始まろうとしていた。次は俺の番だ。時間が無い。

俺:「トシっ。ちょっと付き合って!」

トシに同行してもらい、再びPFCのピットへ行く。今度は担当者が居てくれた。偶然にもタイヤを手配してくれた人だった。

名刺をもらい、挨拶を交わす。パッドを受け取ると、そのままトシに渡す。

俺:「これっ!ピット持ってって!」

パッドを受け取り、ピットへ走るトシ。その間にお金を払い、激励の言葉を貰う。ピットへ戻ると、やまさんが来ていた。

おーた:「このパッド、いいらしいよ。」

俺らが今まで使っていたFCMも、このPFCも使った事のあるやまさんからフィーリングを聞く。

丁度その頃、PLUSμの人がパッドを持ってピットへ来てくれた。

俺:「あっ。すいません。間に合っちゃいました。」

PLUSμの人:「あぁ。良かった。」

ホッと安心した笑顔を見せてくれたPLUSμの人。

PLUSμの人:「じゃぁ予選、頑張って下さい。」

俺:「はいっ!どうも。ありがとうございます。」

つなぎに着替え、パッドの装着が完了する。ブレーキレバーを握ると、いきなりレバーが遠い。

俺:「OK。これで大丈夫!」

Bグループ第2台ライダーの予選開始まで20分と迫る頃だった。なんとか間に合った。椅子に座り、気持ちを落ち着かせる。

Aグループ第1ライダーと、Bグループ第1ライダーの予選結果表からボーダー付近のタイムを割り出す。

アキラ:「ん〜。やっぱ7秒前半あたりだね。」

俺:「うん。分かった。」

アキラ:「だから、自己ベスト1秒縮めて下さい。」

俺:「うん。分かった。」

俺:(自己ベスト1秒か。おもしれぇ。やってやろーじゃねーか。)



Aグループ第2ライダーの予選が終わった。次はBグループ第2ライダーの予選。ついに俺の出番がやってきた。

なるべくクリアラップが取れる様、早目にコースインゲートへ並ばなくてはならない。第1ライダーの予選では、前グループの予選終了直後からピットアウト出口に並び始めていた。全車コースインまでの所用時間は約1分。

ピット前にスタンドアップされたVTRに跨る。エンジンをかけ、暖気を始める。

俺:(あと1秒か・・・。)

去年、俺は予選落ちなんて考えずに準備を進め、7耐ウィークに突入した。VTRと言う強力な力を得、アキラと言う最大の力を失った今年のCompus。今年はこの俺がタイムを出さなければいけない。
去年、アキラは予選で自己ベストを1秒以上も更新した。今年も去年も状況は同じだ。

手足が震えてくる。心臓の高鳴りを押さえられない。緊張がピークに達した。

傍らに立つこの男は、去年、これだけのプレッシャーを背負っていたのか。たった1人で。しかもあの遅いFZRで・・・。

アキラの右手を捕まえ、ヘルメットの前へ持ってくる。グッと目をつぶり、その右手を両手で握り締める。

俺のヘルメットに顔を近づけるアキラ。

アキラ:「俺が0.5秒のパワーを送るから。あと0.5秒は自分で頑張ってっ!」

黙ってうなずく。シールドを閉じ、ギアをローに入れると、ゆっくりとクラッチを繋いだ。


使った事の無い新品のブレーキパッドが入っている為、ピットロードで加速とブレーキングを繰り返しながら列の最後尾に並ぶ。
ピットアウト出口には既に20台近くのバイクが並んでいた。一旦エンジンを切り、レバーを調整する。

俺:(落ち着いて平常心を保て。タイムは気にせず、自分のベストを尽くせばいい。)

やけに長い時間待たされた気がする。午前11時5分。グリーンランプが点灯した。笛の音と共に2台ずつコースインしていく。
Bグループ第2ライダーの公式予選が今始まった。



俺:(1周目はタイヤを暖め、ブレーキを確認する。)

一度暖まってしまえば強力なグリップを発揮するパイロットレースだが、暖まっていない時に無理をすると一気に滑る。

ブレーキは様子を見ながら、いつもより10メートル手前でかけ始める。
特性はやまさんに聞いた通りだった。初期の立ち上がりはFCMも強かったので、それ程気にならなかったが、コーナーが近づくにつれ、握り込んで行くFCMと違い、かけた時と同じ力で最後までグゥッと効いてくれる。頭で理解しても、ブレーキングの後半で握り込む癖が体に染み付いており、同じ様に握り込んでいくと、スピードが落ちすぎ、止まりそうになる。
握り込んでいけない為、停止状態で調整したレバーも、遠すぎた事に気づく。
ヘアピンを立ち上がり、ダウンヒルストレートでバイクを右側に寄せると、両手でレバーの調整を行う。その間、後ろから来た3台に抜かれる。
最終コーナーを立ち上がり、ホームストレート。計測開始。

1周目、2周目は13秒代。初めて使うブレーキパッドに戸惑いが隠せない。今まではクリッピングポイント手前でジワッっとブレーキをリリースしながら、減速による加重を遠心力による加重へ移していたが、このパッドは少しでもブレーキを緩めると、一気にフロントフォークが伸び上がる。うまく1次でバイクを曲げる事が出来ない。倒し込みやリリースのタイミングが掴めず、スピード調整がうまくいかない。どのコーナーも突っ込みすぎたり遅すぎたりしてしまう。

俺:(くっそぉ。ナキゴト言ってる場合じゃねぇ。さっさとタイム出さねーと。)

3周目、11秒。4周目、9秒。5周目、やっと8秒に入れる。

あまり抜かれた事の無いVコーナーの進入でCBR600に抜かれる。ラインがクロスし、フロントが接触しそうになる。ヘアピンまでの短いストレートでチラッと振り返るCBRのライダー。
ヘアピンの進入を見てると、体とバイクの動きがスムーズだ。
ヘアピンを立ち上がり、ダウンヒルストレート。それ程離されない。又してもチラッとこちらを伺う。まるで付いてこいと言われてる気がする。90°コーナーのブレーキングで更に前を行くバイクをパスしていった。

俺:(あいつ、うまい。バイクに頼らず、自分の腕で速く走ってる。)
俺:(よしっ。俺も。あいつに付いて行こう。)

しかし腕の差は否めず、コーナー毎に離されていく。

この間、タイムは8秒中盤から9秒前半。何回ホームストレートを通過しても、サインボードに7と言う数字を見る事が出来ない。

俺:(諦めるな。気合入れろっ!)

予選開始から20分が経過している。途切れそうな集中力を気合でカバーする。相変わらずスピード調整が出来ず、自信のあるS字も進入で突っ込みすぎ、切り返しもスパッと決まらない。

俺:(あ。さっきの奴だ。)

S字で後ろを気にしながらスロー走行しているCBRを見つける。先程付いて行けなかったライダーだ。
S字を切り返し、立ち上がりで抜く。

しかし、すぐさまヘアピンの進入であっさり抜かれ、立ち上がった所で又チラッっと振り返るCBRのライダー。

俺:(俺を待ってた・・・?付いて来いってか!今度こそ付いて行ってやるっ!)

残りの力を振り絞り、全力で付いて行く。90°コーナー、セカンドアンダー。

最終コーナーを立ち上がると、電光掲示はチェッカーとなっており、サインボードには9秒3と表示されていた。

Bグループ第2ライダーの予選が終了した。

クールダウンラップ。最終ラップも7秒台には入れてないだろう。予選は終わった。これが俺の全力だ。これ以上は無い。

ダウンヒルストレートでCBRのライダーを追い越す。

俺:(知り合いの訳ねっか・・・。気のせいだな。)

ピットへ帰る。予選中のベストタイムは2分8秒351。最終ラップのタイムだった。出走56台中、17位。

結局、アキラのパワーを貰っても、予選で自己ベストを1秒縮める事が出来なかった自分に、情けなさを感じてならないが、これが今の実力だ。

予選落ちが決定的となった。



残る予選はBグループ第3ライダーのトシのみ。1時間半程時間が空くため、この間に昼飯を食う。
いつものドライバーズサロンは激混みだし、出店もスナック系ばかりなので、グランドスタンド裏のファーストフードに行く。

グランドスタンドからコースを見下ろすと、Cグループ第2ライダーの予選が行われていた。
そそくさと昼飯を食い、ピットに戻る。Aグループ第3ライダーの予選が終わろうとしていた頃だった。


俺:「精一杯頑張って来いや。今度こそ2秒マジック期待してるぞ。」


Bグループ第3ライダーの予選が始まる。トシにとっては始めて経験する予選となる。

第3ライダーのラップタイムは、予選タイムには採択されない。競技上は予選通過基準タイムをクリアする為だけに行われると言ってもいい。

解説 〜予選通過基準タイム〜
予選トップタイムの130%以内に相当するタイム。
決勝を走る全ライダーは、この予選通過基準タイムをクリアしておかなければならない。
つまり、予選通過したチーム内で、予選通過基準タイムをクリア出来なかったライダーが居た場合、そのライダーは決勝を走る事が出来なくなる。
ちなみに今年の予選トップタイムはF.C.C.TSRの2分00秒123なので、このタイムの130%、2分36秒159が予選通過基準タイムとなる。
午後1時10分、Bグループ第3ライダーの予選が開始された。出走49台。


1周目、17秒から入る。2周目、3周目と15秒。4周目、14秒。5周目13秒。

俺:「ここからだな。」

そして6周目、11秒77。自己ベスト更新。

俺:「で、出たぁ〜。2秒マジック炸裂〜。」

第3ライダーの予選は全体的にペースが遅い。最終コーナーなどで前車に阻まれ、7周目は12秒11。

順位を示すタワーを見ると、ゼッケン78は9位に付けている。

おーた:「うちの第3ライダー、速すぎてどーしょもないね。(笑)」

俺:「やっぱ第3ライダーのタイムで予選決めて欲しいよなぁ。(笑)」


最終ラップも11秒後半のタイムで予選が終了する。最終的にトシの順位は49台中、11位となっていた。


俺:「11出たね。」

トシ:「初めて誰にも抜かれなかった。楽しかったぁ!」

満身創痍の笑顔だった。彼を第3ライダーに選んで本当に良かったと思った。

トシの感想
ブレーキパッドをPFCに変えてから、最高!ブレーキの安心感が増して、ブレーキングポイントを奥まで出来そうだった。(でもやっていない)
ダウンヒルで200m看板を見落とした時はびびった。5コーナーでは引きずったまま侵入しても安定していた。
因みにイニシャルは4メモリ。後は気絶しながら走っていたので、覚えていない。
フルブレーキング中にリアがフニャフニャしていたのが、印象的に残った。フロント固めてから特になのか、俺のブレーキが激しくなったのかは不明。


補欠ライダーの予選中、Kureにテレビ取材の申し出があった。

カメラを向けられ、インタビューを受けるKure。 何とか映ってやろうと落ち着きの無い俺とアキラ

無論、SDRもバッチリカメラに収められた。

補欠ライダーの予選が終わり、全ての公式予選が終了した。タイムスケジュールは、1時間程のピットウォークとなる。

SDRの周りを、にわかに人が集まってくる。

やがて何人もの人がSDRに跨って記念撮影したり、バイクの事を聞かれたり。
俺はこの日初めてSDRをマジマジと見る事が出来た。本番用カウルが着けられたSDRは、人の目を引くのに充分すぎる程、格好良いバイクだった。


芸能人は別として、今日予選を走った172チームの、どのエントラントより、KLEVER RACINGは、メディアや観客の人達と一番コミュニケーションが取れたチームと言えるだろう。

トラブルが続き、当初予定していたタイムは出なかったかもしれない。ここへ来るまでに非難も浴びただろうし、準備途中で挫折感を味わった事もあっただろう。
しかしKLEVERは、ミニバイク及び地方選手権活動をしている完全プライベートチームでありながら、少なくとも今日、ここへ入場料を払い、もて耐を観に来たお客さんを楽しませる事が出来たはずだ。

俺は、「レースは結果ではない。」と言う持論を持っている。

誰もやらなかった、ある一つの形に挑戦したKure。又、そんな彼を信じ、最後まで付いて行ったじゅんと弾丸を始め、KLEVERのクルー全員に拍手を送りたい。




ピットウォークが終わる頃、予選総合結果が発表された。

俺:「俺ら、何番手?」

アキラ:「91。」

俺:「はっ!?91?」

予選結果表を見る。出走167台中、Compusは確かに91番目となっていた。70番手くらいと予想してただけに、ショックが大きかった。しかし、そんなショックも予選ボーダーを見て吹っ飛んだ。

俺:「ボーダーいくつよ?」

アキラ:「6秒フラット。」

俺:「6秒って・・・。」

予選結果表を見ながら、暫く呆然とする。6秒代で予選通過したのは、たったの2台。事実上、5秒台を目指さないと予選通過出来なかった事になる。予選落ちした6秒代は17台。次に7秒代が16台と続き、その下の14台いる8秒代の真ん中あたりにゼッケン78番があった。

俺:「これが今年の予選結果か・・・・。」

速くても8秒代前半と言う俺らの予想を遥かに上回る領域だった。こんなレベルなら91番手もうなずける。5秒代など今の俺達の力ではどんなに頑張っても無理な数字だし、初めからそんなタイムを設定して準備活動もしていない。

7秒を出せなかった俺を、慰めてくれる結果となった。8秒だって必死になって出したタイムなのに、そこから更に2秒以上も先にボーダーがあったのだから。
正直、少し気分が楽になった気がした。

そして今年も、やってはいけないはずだった70耐に目をむける。

午後3時丁度。70耐禁止令が解除された。



セッティングデータ
ノーマル今日のセッティング(スプリング変更)
サスペンション
(フロント)
突き出し0o7o
油面130mm150mm
イニシャル4目盛りHIRO3目盛り/トシ4目盛り/おーた5目盛り
ダンパー最強から1回転戻し最強から1/2回転戻し
サスペンション
(リア)
車高0o5o上げ
イニシャル最弱から2段目最弱から3段目
ダンパー最強から1回転戻し最強から1/2回転戻し
メインジェットF165、R162(国内仕様)F175/R178

予選のベストタイム
HIRO2分08秒351自己ベスト更新
トシ2分11秒776自己ベスト更新
おーた2分11秒863


〜 予選の教訓 〜

・ガソリンは入れよう!

以上

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