練習走行(8月19日)
作成日:01/09/11
更新日:01/09/11
8月19日、日曜日。4日後にもて耐の公式練習を控えた今日は、レーサー枠4本を予約し、これを3人で乗る。
VTRはフロントの剛性不足をなんとか補おうと、フォークのオイル粘度を25番まで上げ、油面も10mmプラスの120mmまで上げた。
突き出しをあと1mm下げ、イニシャルを入れたかったが、修復を繰り返したエキパイは路面に近くなり、フルバンクでアンダーカウルが路面にあたり始めた。もうこれ以上前は下げられない状況だ。

今年の練習量は第1回公開練習で1本、3耐の公式練習で2本、予選1本、決勝9周。ここまでのベストは3耐決勝で1周だけ7秒まんなかのタイムが出ただけ。今日のうちに少なくとも6秒前半は出しておかないと、7耐なんて夢のまた夢だ。
ここへきてのフロントの大幅なセッティング変更は、賭けだった。この少ない練習量で5秒台を狙わなければいけないと言う課題に向け、何か明るい兆しが欲しかった。

エンジンはカムシャフトを変更した事により、フルパワーの輸出仕様となった。トップエンドのパワーは増したような気がするが、マイルドだった出力特性が暴力的になり、開け始めが遅れがちになった。良かったのか悪かったのか判断もつかない。何よりタイムに反映されてないが、人間のせいかもしれない。

9時45分、1本目の走行はおーたが出動するも、すぐにピットインしてきた。
フロント中央部に追加したラジエターにフロントタイヤがあたったらしい。


すぐにラジエターを取り外し、コースイン。今年のベストに近いタイムで走行を終えた。

12時丁度、2本目の走行でHIRO出動。変更したフロントのセッティングを確認し、何としても6秒台を出して望みをつなげたい。去年はこの時期に6秒1が出ている。

15秒から入り、10秒、9秒、8秒と縮めていくが、クリアが取れず、ここから先が伸びない。更にペースを上げていこうと試みるが、フルバンクで路面にどこかがあたっている音がする。5コーナーで滑らせたリアの感じは、3点支持でリアが持ち上げられたような感覚だった。

HIRO:(やっべぇ〜な〜・・・。)

全体的にアクセルを開けるポイントが去年より遅い。ブレ−キングポイントも去年より手前だが、曲げられてないのでこれ以上無理しても意味が無い。各低速コーナーでは、2速へ落としてから開け始めまでの動きがスムーズにいかない。

HIRO:(ちょっと、これ以上は無理・・・。)

結局、10周目の8秒フラットをベストに走行を終える。

ピットへ戻り、アンダーがこすれていないか確認を頼むとつなぎを脱ぐ。

HIRO:「あれ?」

左のブーツ先端にオイルがついている。

HIRO:「おーたぁ!ブーツにオイルついてる。」

おーた:「う〜ん。出てるねぇ・・・。」

既に発見し、でどこを探っているおーた。

着替えてVTRの様子を見に行くと、ドライブスプロケットが外されていた。

HIRO:「分かった?」

おーた:「これ。」

HIRO:「これ・・・・あっちゃぁ〜。」

ドライブシャフトのシールが剥離し、そこからエンジンオイルがにじみ出ていた。

HIRO:「・・・これって、つまり、クランク割らないとだよね?」

おーた:「そ〜だな。」

HIRO:「・・・シール持ってる?」

おーた:「これは持ってねぇなぁ〜。」

HIRO:「持ってねぇよなぁ〜。」

今から頼んでもパーツが来るわけない。仮に来たとしても、もう組む時間がない。今日頼んで3日後に手に入れ、翌23日の公式練習日を組みつけにあてるしかない。人手もいる。

どーでもいいが、「いったい、どーなってしまうのかっ!」ってのは、これくらいの状況をもってきて言えやと言いたい。



ストックしている純正パーツをがさごそあさっているおーたを尻目に、とりあえずトシと飯を食いに行く。

HIRO:「どうする?」

トシ:「うん。俺はいいよ。ってゆーか、おーたさんがいいならそれでいいよ。」

HIRO:「了解してくれるか。そっか・・・。」

HIRO:「おーたは多分OKすると思うよ。あのバイクこれからもスプリントで使うし、もて耐って結構距離走るしさ。」

HIRO:「じゃぁちょっといきなりすぎで申し訳ないけど、使わせてもらうね。」

どーでもいいが、おいつめられて「早すぎるけど、今使わず、いつ使うのだ」ってクシャナの気持ちがちょっとわかる気がした。

飯を食い終わり、ピットへ戻ると汗だくのおーたが言う。

おーた:「あったよ!シール。中古だけど。」

前使っていた中古のシールだった。見た目、問題なさそう。

今日これからエンジンを落とす準備だけしておき、22日に朝早くもてぎへ来て、ピットで作業する。その日に終わらなければ翌日23日の公式練習日も作業にあてれば予選には間に合うだろう。但し、エンジン内部には何の問題も無く、シール交換だけでの話だ。万が一、エンジン内部にシール破損の原因があり、それが判明したとしても2日後の予選までにはどうする事も出来ないだろう。
バイク的には間に合ったとしても、1度も6秒に入れてない状態で予選に望む事に変わりは無い。

HIRO:「あのさ・・・。」

おーた:「ん?」

神妙な面持ちの俺に、何かを感じ取ったようなおーた。

HIRO:「車両、換えない?バイクあるんだけど。」

おーた:「な!ん・・・?」

HIRO:「最近はやってるアレだ。いわゆるひとつの、衝撃の事実が明かされるって奴だ。」

おーた:「トシ!!!」

HIRO:「そう。いきなり見せてびっくりさせようと思って黙ってたんだけど、トシのバイク納車されてんだよ。」

どーでもいいが、「予想だにしなかった事態がっ!」は、これくらいの事態をもってきて言えやと言いたい。

バイクをトシのトランポから下ろし、お披露目する。


HIRO:「CBR600F4i。バムコンプリートだ。まだ1回も走ってない。」

HIRO:「どうよ。」

おーた:「いや、トシがいいんならむしろこっちのがいいと思うが。」

HIRO:「んじゃ決まりだ。今年はこれでいこう。」

今日はあと2本残ってる。この2本でナラシを終わらせ、明日トシ2本,俺3本で全開走行する。



カウルが外され、既にエンジン各部のボルト数本が緩められた状態のVTRに近寄る。
元々は7耐を目指し、7耐用に買ったこのバイクだが、結局1度も決勝を走らせる事は出来なかった。VTRの正面に立ち、突き出た2本のカウルステーをぐっと握り、謝るとともに御礼を言う。もう2度と俺がこのバイクに乗る事は無いだろう。

CBRは走行前に各部のチェックを行う。このコンプリートは基本的になにもする事が無い。最初からサーキット走行仕様に作られているので、クローズドブリーザシステムになってるし、オイルドレンにはワイヤーロックもしてある。このまま車検場に持ってっても通るくらいだ。ラジエターにはクーラントが入ってるので水と入れ替え、新品タイヤに脱脂して空気圧あわせてガソリン入れればOKだ。ナラシなので、前後サスセッティングもスタンダードのまま。ファイナルは出荷時からもてぎ仕様。レバーとペダルの調整だけ合わせる。

久しぶりに自分のバイクで走るトシ。新車のシェイクダウンとあってややにやけてる。
隣はWebRidersのまつだ氏

十分暖気運転を行い、トシ出動。ナラシは7,000回転から2周毎に1,000回転ずつ上げていく。ボードには回転数のみ表示する。
レーシングラインを外し、淡々とナラシ運転をこなし、11周で走行が終了する。

HIRO:「ど、どうよ?CBRどうよ?」

トシ:「いやぁ〜。すっげ〜乗りやすいよ!」

HIRO:「そうか〜、乗りやすいか〜、そっか〜。」

トシ:「次、乗っていいよ。」

HIRO:「えっ!マジ?いいの?」

トシ:「ナラシだかんね。ちゃんとナラシしてよ。」

HIRO:「りょーかーい♪」

で、今日最後の走行、5時丁度に俺出動。
まずは10,000回転で2周ほど。計測1周目のタイムは16秒3で、2周目が13秒8。3周目に赤旗中断で一旦ピットへ戻る。

トシ:「どう?ちゃんとナラシしてくれてる?」

HIRO:「めぢゃぐぢゃおもしれーー!(;;)」

レース初めて丸10年、こんな面白いバイクに乗ったのは初めてだと思った。なんと言うか、「走る、曲がる、止まる」が明確になってると言うか、とにかく技術の進歩を体で感じた。感動した。

赤旗が解除され、再びコースイン。今度は12,000回転でシフトチェンジ。この回転域まで回すと、西区間の各ストレートではキッチリ6速まで入り、戻す必要もない。新車なのでシフトタッチもしっかりして気持ちいい。エンジンは下から綺麗に吹け上がり、12,000回転でもまだまだ先がありそう。常用域は9,000回転付近からと言った感じ。回したい気持ちを抑え、周回を重ねる。
タイムは15秒から14秒、13秒、12秒と1秒ずつ詰まっていく。サインボードにはタイムと残り時間が表示されている。

Compus
RoadRacing

HIRO:(残り2分・・・最終ラップだな。)

最後の1周、1,000回転上げて13,000回転まで回す。
まだトルクの山と言った感じではないが、ダウンヒルだけブレ−キングポイントの100メートルくらい手前でアクセルを戻すので、あと1,000回転は使えそうだ。
最終コーナーを立ち上がるとチェッカーだった。十分楽しんだナラシ走行を終え、ピットに戻る。最終ラップのタイムは9秒5だった。


それにしても楽しいバイクだった。ナラシとはいえ今日は最新のスポーツバイクを堪能した。よく考えてみると、まともにサーキットを走れるようになってからは新型に乗る事も無かった。少なくとも900やR1やR1000はこれよりもっと速いし、みんな今までこんないいもん乗ってたんだと思うとちょっとずるいな〜とも思った。それほどいいバイクだった。

あと1,000回転残して10秒切った事が、明日の全開走行を期待させた。初めての全開走行でいったい何秒出るのだろうか。



セッティングデータ
サスペンション
(フロント)
突き出し38o
油面117o
粘度G10
INI14mm
TEN1/4回転戻し
COMP3/4回転戻し
サスペンション
(リア)
車高+12o
INI4段
TEN1+3/4回転戻し
COMP3/4回転戻し



〜 今日の教訓 〜

・市販車をなめちゃいけない。

以上

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