第1回公開練習−初日(6月19日)
作成日:00/07/02
更新日:00/07/10
6月19日、月曜日。2000年もて耐の第1回公開練習日初日。
今年の公開練習は1回目が今日と明日。2回目が8月7日と翌8日。どちらも平日の2日間が組まれている。
ちなみに今日も明日も走行は無料。かなり無理矢理仕事を休んだ俺らは両日参加。
個人的には今年始めてVTRに乗る。もてぎには一昨日の土曜から入っており、昨日も一般のスポーツ走行だったが、乗り始めの今日を現場活動でのドキュメント開始日とする。
梅雨真っ只中のこの時期だが、梅雨前線の南下により、雨だった直前の天気予報は大幅に外れ、今日も朝から全開晴れ。湿度も44%とそれほど高くなく、蒸し暑い感じでもない。
バイク他大きな荷物は昨日のうちからピットに置いていったし、8時半からの受付に間に合えばよかったので、遅めにパドック入り。結構な数のトランポが止まっている。
「今年も結構居るなぁ。」バイクを置いていったいつもの31番ピットへ向かう。
「あれ?シャッター開いてんじゃん。」
「つーかレスポールのトラック。」
「弾丸いた。よくここのピット見つけたな。」
去年はKLEVERでエントリーしていたじゅんと弾丸。今年はレスポールからエントリーしている。89年型NSRでの参戦らしい。
受付前にはトシも到着し、ライセンスを受け取って受付は終了。
ブリーフィングの開始時間も間近になった頃、チーム責任者への出席を促すアナウンスが流れる。
レスポール軍団はみんなでブリーフィングへの出席を押し付け合った後、その出席者を決めるべく、ゲームを始めた。
その間、アキラはピットにいる俺とおーたの間を交互に行き来する。
アキラ:「えぇ〜っと、ブリーフィングって何時から?」
アキラ:「あぁ〜っと、今何時?」
アキラ:「んん〜っと、誰が行くんだっけ?」
俺 おーた:「おめーが行けっ!」
アキラ:「ブリーフィングってどこ?」
ゲームに負けたじゅんと一緒にブリーフィングへ向かうアキラ。
おーたはフロントがイマイチ頼りないとの事で油面を上げている。
30分程して資料を手にしたアキラがブリーフィングから帰ってくる。
参加者リストからユニークなバイクでエントリーしているチームを探す。
250だと89NSRのレスポールもびっくりのNS250R。400なら初期型ZXRに始まり、インパルスやSRXにVF。どーでもいいが、VFの83年型ってのが一番古そうだ。変わった所ではVTR100Fってのもある。しかも俺らのVTR。
俺:「よぉ。おーたのバイク車検ギリギリなんな。」
おーた:「なんで?」
俺:「だってこれ100ccなんしょ?いつから変えたん?」おーたにリストを見せる。
おーた:「あ。ほんとだ。(笑)」
俺:「えっらい遅そうなバイクだな。」良く見ると結構間違いが多い。
ざっと見た感じでは今年も900のCBRやR1が多い。参加台数125台。
グループ分けは今年もA,B,Cの3グループ。各グループとも午前40分1本午後30分1本。俺らはBグループ。
当り前だが、公開練習時の走行時間は年々少なくなる。去年は雨だった事もあって参加80台足らずだったが、初年度はグループ分けこそされてたものの、TRMC会員の俺らは1日中走れていた。
午前中、Bグループの走行は11時半から。随分と時間が空く割にやる事が無い。自分のバイクでも整備するつもりだったが、走る事を考えると中途半端になりそうで、あまりやる気がおきない。
10時半からAグループの走行が始まった。
去年の公開練習では、各グループの上位6台あたりが予選通過ラインだった。走行も後半に入った頃、モニターに表示されるタイムを見てみると、6番手近辺は6秒〜7秒。
「結局、去年とあんま変わんねんだな・・・。」
セット出しで国際の第3ライダーが走ってるのかもしれないが、予選を国内だけにしたからと言ってそれ程大幅にボーダータイムが下がるとも思えなかった。
Aグループの走行中に、車検員がピットに来る。各ピットを廻り、必要に応じてアドバイスしてるらしい。
暫し、俺のTZを眺めている車検員。
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俺のTZにチェックを入れる車検員 |
車検員:「これレーサーですよね?」
アキラ:「えぇ。TZです。」一番近くにいたアキラが対応する。
車検員:「これで出るんですか?」
アキラ:「あ。いやこれは昨日の練習で走って・・(以下略)」
車検員:「そうですよねぇ。これじゃ出られないですもんねぇ。」
アキラ:「そうですよね。はっはっは。」
車検員:「はっはっは。」
今度はVTRをマジマジと見始める車検員。
車検員:「これはいかんなぁ。」
アキラ:「えっ?なんすか?」
何事かと説明を聞と、ステアリングダンバーの先っぽについてるアジャスターのつまみが付いてないのがいけないとの事。鈴鹿ではこれで怪我人の事例があるそうだ。
尿から帰って来たおーたに説明する。
俺:「これ、いかんそうだよ。とりあえず今日はOKみたいだけど。」
おーた:「あぁ。了解。んじゃとりあえず版で対処すっか。」
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6角ナットをビスで固定 |
6角ナットはロッドのねじ山に合わず、ビスで脱落しないようになっており、クルクルと指で簡単に回る。
「あんま意味ねーけど、無いよかマシか。」
2回程赤旗中断となり、Aグループの走行が終了した。今日のオイルまきは、とりあえず1コーナーらしい。
今日はアキラも2〜3周乗ってみる。40分の走行時間内に2回もライダー交代するのは効率が悪い為、午前中はおーたと俺で乗り、午後の30分をトシとアキラで乗る事にする。
Bグループの走行開始。まずはおーた出動。7周計測で交代。
6周目の12秒をベストに13秒〜15秒で周回。計測開始から7周目にピットインサインを出す。
VTRに乗るのは去年の70耐以来だ。いよいよ乗れると思うとやはり緊張するので、ここは一発気合出しをする。
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「全員ぶっちぎりじゃぁ〜。」 |
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解説 〜気合出し〜
気合は普通入れるものだが、入れた気合を表に出すことを言う。
入れすぎた気合を調整する時に用いられ、緊張が和らぐ効果を得られる。
(理解出来ない人は真似しないで下さい)
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ヘルメットをかぶってピット前で待っていると、ホームストレートを通過するおーた。
「あら。珍しいな。」ストレート通過時に他車とからんでいた為か、おーたにしては珍しい見落としだ。
次の周にピットインしてくる。
おーた:「S字とかオーバースピードで入ってくとフロント暴れるから気をつけてっ」
俺:「あい。そんなに攻めないからだいじょーぶ。」
おーたの話を聞きながらブレーキのアジャスターを調整する。ふぅっと一呼吸してピットアウト。
久々の1本目なので、体ならしと割り切る。感覚が掴めた所で終わるだろうが、いきなり乗って慣れる前に転んでもアホだ。
フロントはおーたのセッティングに合わせてある為、ブレーキは無理をせず充分手前からかけ始める。様子を見ながらゆっくりと1周。
おーたが言う通り、確かにパワーアップしている。トップエンドの頭打ちが早くなってトルクの落ち込みも大きくなった気もするが、中速までのパワーは相当向上しており、ストレートは確実に速くなっている。からんだVTRやSP1の中では断然こっちが速い。これだけパワーがあればストレートで600にも付いて行けるばずだ。
又、オーリンズにしたリアサスもかなりいい。まだ滑り出しまで開けられてないが、2次の旋回性が良く、ノーマルの時より安心してしかも手前から開けていけるし、こーゆーバイクは走ってて楽しい。おーたが別物と言うのも分かる気がする。
これなら去年のように全開区間を長めにしてブレーキングでタイムを詰めるようなセッティングではなく、早めに開けられる本来的な方向でセットアップしていった方がよさそうだ。
おーたがセットアップを続けてきた2年目のVTRは、確実に進化していた。
1周目、15秒。そこから1秒ずつ縮めて4周目突入時点のサインボードは13秒。
(13か。んじゃ今のラップ12入ってるな・・・。)
やや欲が出てくる。
(ちょっとがんばっちゃお。)
予定変更。体馴らしのつもりだったが、この調子でペースアップする事にした。
それでもブレーキング区間は長めにとり、余裕をもってコーナーへ進入。なるべく手前で開け始める事を心がける。相変わらず進入でも立ちあがりでもフニャフニャとする挙動が懐かしい。このペースだと前からバイクが近づき始めるが、無難にこれをパスしていく。
ヘアピン進入で追いついた900にダウンヒルストレートでおいて行かれる。
(で、でたぁ。このやな感じ。)
ダウンヒルのブレーキングポイントはさっきから思いっきり200メートル以上手前にしている。ブレーキングでイン側から並びかけるが、無理をせず見送って後から90°コーナーへ進入。
案の定、予感は的中し、最終コーナー立ちあがりまで思いっきり引っかかる。
(ま、まいった。1周台無し。)
サインボードは12秒フラット。残り1周。
(これで最後か・・・。)
ラストラップ。勢いを保ち、攻め気味に1周。運良く引っかかる事も無かった。最終コーナーを立ちあがり、サインボードを見ると12秒前半のタイム。そしてチェッカー。
あんだけ引っかかって12秒出てるんなら今のラップ、確実に11秒が出てるはずだ。
ピットへ戻るや否やシールドを上げ、タイムを聞く。
俺:「ふぅ。最終ラップ何秒?11出たべ?」
goma:「10秒53です。」
俺:「あ・・そ。」
まさか10秒台に入れてるとは思わなかったので、ちょっとびっくりした。ベストの2秒落ち。とりあえず1本目にしては上出来だった。
〜〜昼〜〜
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Compus流ラーメンの食い方。(あぶないのでよいこはまねしないでね) |
午後のBグループは3時20分から。3時間も空く。
フォークは油面を上げた事で昨日より随分よくなったようだ。バイクは特にやる事無し。
「う〜ん。暇だ。」
レース的に言えば、現場で慌てて作業してるよりかよっぽどいいが、ここまで暇だと98年が懐かしく思えてくる。もうあんな思いはしたくないが、ドキュメント的には書く事も少なくなる。
昼休みはいろんな人がピットへ訪れる。最初の客は午前中も来てた車検員。
おーたの施したステダンのとりあえず版を見て、「あ。おっけーですね。」と言って去っていった。
「あれでおっけーなんかい。」
次に訪れたのはメディアの人。
メディアの人:「ども〜。コンパスの方ですか?ちょっとおじゃましますぅ〜。」
「はい。ども〜。お疲れさんです〜。」
メディアの人:「えぇ〜っと、もて耐のプログラム用の写真撮ってまして、もて耐の有名ライダーがいるチームを回ってるんですけども〜、よろしかったら写真撮らせてもらっていいですかねぇ?」
俺:(有名ライダー・・・?)みんなして顔を見合わせる。
おーた:「俺か?」
俺:「あ。そですか。わかりました。えっと、ここでいいんですか?」
メディアの人:「あ。もうどんなでもいいですよ。よろしければバイクと一緒にしてもらってもいいですし、お好きなようにして下さい。」
俺:「あ。そですか。えぇ〜っと、おーた君、バイクピット前に出してみようか。」バイクをピット前に運ぶ。
メディアの人:「すいません〜。御足労おかけします〜。」
俺:「いえいえぜんっぜん。みんな揃ってた方がいいですよね?」
メディアの人:「あぁ、もぅどうぞどうぞ。みなさんで。お好きなように。」
バイクを前に揃う。
メディアの人:「なんかポーズとかあればお好きなように。」
いつものガッツポーズでパシャッ。
メディアの人:「も1枚すいませ〜ん。」とパシャッ。
メディアの人:「はい。どもありがとうございました〜。」
「ども〜♪」
こめつきバッタのように腰の低いメディアの人が去っていく。
「俺らプログラム載るんかな?予選落ちしたらかっこわりーね。」
「しっかし、Compusに有名ライダーがいるとは知らなかったなぁ。」
最後の来客は正真正銘の有名ライダー。芸能人ライダーの岩城滉一氏。風通しのいい場所に置いてあった俺のグローブに近寄ってくる。つい最近衝動買いしたアルパインスターのグローブ。
岩城氏:「ども。これ普通の店で買ったんですか?」
これまた一番近くにいたアキラが対応する。
アキラ:「えぇ。そうですよ。」
岩城氏:「これLですか?」
アキラ:「はい。Lです。」
岩城氏:「ちょっとはめさせてもらっていいすか?」
アキラ:「あぁどうぞ。いいですよ。」
岩城氏:「もう日本で売ってるんだぁ。これいいっすよねぇ。」とか手にはめながら独り言のようにつぶやいている。
岩城氏:「ども。ありがとうございました。」と元の場所にグローブを置き、去っていく岩城滉一氏。
俺:「それ、俺のなんだけど。」
アキラ:「これLだよね?」
俺:「うん。正解。」
トシ:「プレミアグローブになったね。」
去年も彼がもて耐で使用した血の着いたグローブが雑誌のプレゼントコーナーに載っていたのを思い出す。
俺:「岩城滉一のファンに売りつけるかな。10万でどうよ?」
おーた:「どれどれ。」とそのグローブを自分の手にはめるおーた。
おーた:「ふ〜む。なかなかよい感じだね♪」
俺:「価値無くなったがな・・。」
〜〜昼終了〜〜
午後の走行時間が近づいてくる。次はトシが最初に走り、8周計測でアキラへ交代。
トシ:「俺の目標何秒かな?」
俺:「あ、あのな・・つーかおもしれー質問だなそれ。」
俺:「えっと、まぁ最近乗ってないし、ベストの3秒落ちくらいで走れりゃいーんじゃん。14とか15とか。とりあえず14にしとけば?」
午後3時20分、Bグループ2本目の走行開始。トシ出動。
1周目24秒、2周目21秒。そこから1秒ずつ縮めていき、6周目に18秒。少しずつ感覚を取り戻している様子。次の7周目にいきなり15秒を出すと、それをベストに8周を走り終え、アキラへ交代。
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アキラのVTRデビュー |
走行残り5分で交代した為、1周しか計測出来なかったアキラ。デビュー1周目のタイム2分21秒24を記録し、チェッカーとなる。
アキラ:「はぁ〜。俺もて耐のライダーじゃなくて良かった。」
俺とおーたはこのまま残って明日の公開練習も参加するが、アキラとトシは今日帰る。
トラブルでまともに走れなかったレスポールも予定を切り上げ、今日帰る事になった。明日はガレージで整備日にあてるらしい。
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レスポールの作戦会議 |
第1回公開練習の1日目が終了した。すっかり人の少なくなったパドックを見下ろし、去年を振り返る。
(去年は泣き言いってたっけな・・・。)
去年の第1回公開練習は雨やトラブルで全然走れなかったが、本戦まで1ヵ月をきった第2回公開練習で12秒しか出せず、随分と悩んでいた事を思い出す。
出るはずだったアキラが怪我で入院し、自分がどれだけあいつに甘えていたかを実感した時でもあった。
ずっといつもあいつのモノ真似だった。それでタイムは縮まるし、俺はそうやって走って来た。ブレーキングポイントや倒し込みのタイミング、ライン。同じバイクに乗る耐久の時は特にあいつの話を参考にトライし続けてきた。
去年も他力本願で望もうとした矢先にアキラの事件があった後は、今まで与えられていたライディングデータが途絶えられた状態でタイムを出そうと必死になっていた。
(俺もがんばっとかねーと。)
与えられた条件と限られた時間の中では特に、毎回毎回ただタイムを出そうとがむしゃらに走っても駄目だ。どこまでイケるかどうすれば速く走れるか。自分で考え、トライしていく事が大切だ。
とりあえず明日は2本走れる。この2本をどこまで有効に使うかが明日のカギだ。
セッティングデータ
サスペンション (フロント) |
突き出し | 12o |
油面 | 120o |
粘度 | G15 |
INI | 最強から6段目 |
TEN | 最強から1回転戻し |
サスペンション (リア) | 車高 | +5o |
INI | +2o |
TEN | 最強から14ノッチ |
COMP | 最強から12ノッチ |
メインジェット | F172/R175 |
今日のベストタイム(今日以降、ベスト更新の基準タイムとする)
HIRO | 2分10秒53 |
おーた | 2分12秒82 |
トシ | 2分15秒80 |
アキラ | 2分21秒24(キラーン☆) |
〜 今日の教訓 〜
・今年のボーダーは7秒台だ!?
以上
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